R.シューマン 交響曲第1番 変ロ長調 <春>

指揮フレデリック・ストック
演奏シカゴ交響楽団
録音1929年12月18日
カップリングフランク 交響詩「贖罪」 他
「シカゴ交響楽団初期録音集」より
発売BMGファンハウス(RCA)
CD番号BVCC-38251(82876-51387-2)


このCDを聴いた感想です。


 シカゴ交響楽団というと、ライナーやショルティに代表されるように、良くも悪くも、機械のように正確に揃ったアンサンブルがまず思い浮かぶのですが、このアンサンブルの基礎を築いたのが、この演奏の指揮者である、シカゴ響第2代音楽監督のフレデリック・ストックだと言われています。
 初代音楽監督で創立者でもあるセオドア・トーマスの尽力も大きかったのですが、ストックは1905年に亡くなったトーマスの後を受け継ぎ、以後1942年にストック自身が亡くなるまで、37年にも及ぶ長期にわたってシカゴ響をじっくりと育て上げたのです。
 その後、第3代のデフォーを経て、ロジンスキー、クーベリックがさらに磨き上げ、第6代のライナーの時代に、ついに一つの頂点に至ります。
 ただ、ライナー時代があまりに有名になってしまい、ショルティより前のシカゴ響の演奏といえば、ほとんどライナーの独擅場で、後はマルティノンとクーベリックの録音が、たまに注目される程度です。
 実は、ストックを始めとして他の指揮者もそれなりの数の録音を残しているのですが、ライナーの陰に隠れてほとんどCD化されることが無く、耳にする機会がありません。
 わたしも、ストックの演奏は、このシューマンの他には、R.シュトラウスの「イタリアより」の抜粋を聞いたことがあるぐらいです。
 結局、ストックの演奏を聴くのは、ほとんど初めてみたいなもので、後の機械みたいに精密なアンサンブルの基礎を築いた人の演奏とはどんなものかと思って聴いたのですが、やはりおおむね期待通りでした。
 アンサンブルはほぼ揃っていて、響きもよく締まっています。
 録音の影響もあるのでしょうが残響が少なく、厚みは薄いのですが、低音が良く鳴っているため貧弱に感じ事は無く、むしろ厚みが薄い分だけ、余分な贅肉を落として鍛えぬいたみたいに鋭さがあります。
 さらに重視されているのはリズムで、常に強調され硬く演奏されています。
 その一方で、メロディーはその上に軽く乗っかる程度で、あっさりと歌われていて、思い入れたっぷりに歌わせたりはしていません。
 また、テンポもきっちりと一定のテンポをキープしていて、ここまでは良いのですが、いざテンポを変えようという時に、あまり融通が利かず、曲の流れを遮って強引にテンポを変えているような不自然さを感じました。
 どうも気質的には、後のライナーのように一定のテンポをキープして畳み掛けるような直線的な演奏をする時に良さが出る、どちらかというとモダンなタイプのようなのですが、これも時代的なものなのか、ロマンティックな傾向が残っていて、戦前に活躍した指揮者がよくやるように、途中で大きくテンポを落としたり、急に速くしたり、挙句にポルタメントまで入れていたりします。
 しかし、これがどうも上手く噛み合っておらず、無理にロマンティックに演奏しているみたいに聞こえます。いっそ、後の即物主義的な演奏のように、常に一定のテンポをキープしてほとんど動かさなかった方が、おそらくもっと良い演奏になった事でしょう。
 もしストックがもう30年遅く生まれていて、しかも時代の波に乗っていれば、おそらく即物主義的な演奏をしていたでしょうから、ちょっと生まれてくるのが速すぎたのかもしれません。(2003/11/22)