R.シュトラウス 七つのヴェールの踊り 〜歌劇「サロメ」より〜

指揮トマス・シッパーズ
演奏シンシナティ交響楽団
録音1976年5月
カップリングR.シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」 他
発売MOBILE FIDELITY SOUND LAB(VOX)
CD番号MFCD 811


このCDを聴いた感想です。


 七つのヴェールの踊りという曲は、皆さんもご存知かと思いますが、ヒロインのサロメに、義父のヘロデ王が何でも望みをかなえるという約束をしてまで踊ってもらった場面での曲で、それだけの条件を引き換えにしても惜しくないほどの踊りです。
 まあ非常に官能的なもので、早い話が、歓楽街にある、警察の手入れがあったら一発で摘発されそうな店で行なわれているショーみたいなものですね(笑)
 といっても、さすがに音楽の方までその雰囲気をストレートに出してしまってはそれこそそういう店そのまんまの安っぽい感じになってしまうので、基本はキチッと仕立てつつ、チラチラと色気を出すというというぐらいが割と歌劇に合っているのではないかと思いますが、この演奏はそこまでの色気もありません。
 もっと穏やかで上品なのです。
 そんな怪しげな店にはカケラも縁が無い箱入りお嬢様といった感じで、それこそ娘が普通に父親に言われて素直に日本舞踊を舞っているみたいに健全です。なんだかちょっと世間知らずの明るい女の子というイメージの、劇中での性格とは全くかけ離れたほとんど別人のようなサロメです。
 歌劇の方をよく知っている人がこの演奏を聴いたら、あまりの違いに眩暈がしてくるのではないかと心配になってきますが、わたしみたいに歌劇全曲は見たことが無く、しかもこの「七つのヴェールの踊り」単体で聴く者にとっては、こういう演奏でもなかなか楽しめます。
 もう、シーンの方は完全に忘れて音楽単体として割り切りました(笑)
 この演奏で印象に残ったのが響きの柔らかさです。鋭いメロディーを包み込み、平和的で優しい音楽にしています。
 力強さや甘さはほとんど無く、穏やかで淡く明るいといういかにも「中庸」といった感じで、飛び出たところが無いというバランスの良さがこの演奏の美しさです。
 逆に言えば大人しいわけで、刺激が足りないとして物足りないと感じる方もいらっしゃると思いますが、まあそれは当たっていますし仕方ないともいえるでしょう。
 刺激を捨て、この曲を厚い響きで品良くまとめたところが特徴であり、わたしはこういう雰囲気のサロメも優しくて良いかもしれないと思いました。

 指揮をしているトマス・シッパーズは、1930年生まれと、それほど古い世代ではありませんが、残念ながら肺ガンのため1977年に47歳の若さで亡くなっています。そのシッパーズが最後についたポストがこのシンシナティ響の常任で、この演奏は亡くなるわずか1年半前の録音というわけです。
 シッパーズは録音をそれほど多くは残していません。それでも60年代にはデル・モナコと組んだビゼーのカルメンなどもありましたが、そのほとんどがオペラかその序曲集などで、あまりCDに復刻されてはいないのではないでしょうか。
 このCDを聴いて、最後のシンシナティ響との演奏は、もうちょっといろいろ聞いてみたいとは思っているのですが、ほとんど見かけたことが無く、なかなか難しそうです。(2004/11/20)


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