R.シューマン ピアノ協奏曲 イ短調

指揮クラウディオ・アバド
独奏ピアノ:マレイ・ペライア
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1994年12月27〜31日
カップリングR.シューマン 序奏とアレグロ・アパッシオナート
発売SONY
CD番号SK 64577


このCDを聴いた感想です。


 優しくきれいな演奏です。
 ソロ、オーケストラともに。
 まずソロのペライアのピアノですが、とにかくその澄んだ音色が印象に残りました。
 曇りの無いガラスのように透明感のある音で、ちょっとでも指が触れたら指紋がついて台無しにしてしまいそうなぐらい純粋です。
 木の温かみではなく、どちらかというと金属に近い冷たい音ですが、キツイ音ではありません。
 決して音の出だしを叩きつけるように鋭くしないで、フワッと柔らかく、響きで音を包み込んでいます。
 第1楽章や第3楽章の冒頭のようなフォルテの部分でも柔らかさは変わりません。そのため、もしこの曲に力強さや迫力を求めるとすれば、かなり物足りなく感じるでしょう。
 逆に、力強さと迫力を抑えることで、全曲を通じて涼しげで気持ちの良い雰囲気を保っています。
 伴奏のオーケストラも、同じ雰囲気でピタリと付けています。
 いや、伴奏がソロに合わせているというより、両者の目指す音楽がちょうど同じものだったと言った方が近いかもしれません。
 そう思わせるぐらい、ソロもオーケストラも自らがやりたり音楽をそのままやっているだけのように自然に演奏しながら、その音楽には温度差や隔たりが全くありません。
 オーケストラの音の出だしも、ソロ同様に柔らかく、非常に注意深くていねいに演奏しています。
 もちろんそうはいっても、場所によってはアクセントがついている音もありますから、そういうところはたしかにある程度は硬くハッキリとアタックを付けています。
 しかし、アタックを付けるときも、決して「ガーン」といった濁った響きは出さず、「コーン」という硬くても澄んだ音で、美しく響かせています。
 さらに、響きも厚いものではなく、ベルリン・フィルという大編成のオーケストラのはずですが、人数を減らしているのか、半ば室内オーケストラに近いぐらい風通しの良い軽さです。
 弦が薄い分、管楽器がよく目立っています。しかし、目立つといっても弦をかき消すように強く自己主張するのではなく、あくまでも根底に弦の響きがあり、その上で遠くまで響く鶯のように涼しげによく歌っています。
 また、薄い響きは、それぞれのパートの動きも鮮明にしています。
 第3楽章の後半に登場する、フーガのようにメロディーがずれて重なって行く部分などは、一つ一つのメロディーの動きがしっかりと表れています。
 全体の雰囲気は柔らかくフワッとしていて、言ってしまえば半ば夢の中のような幻想的な印象を受けますが、案外、足回りはしっかりとした、安定感のある演奏です。(2006/9/2)


サイトのTopへ戻る