R.シューマン ピアノ協奏曲 イ短調

指揮フリッツ・ライナー
独奏ピアノ:ヴァン・クライバーン
演奏シカゴ交響楽団
録音1960年4月16日
カップリングプロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番
発売BMG(Living Stereo)
CD番号09026-62691-2


このCDを聴いた感想です。


 第1回チャイコフスキー・コンクールで優勝し、一躍時の人となったヴァン・クライバーンは、ライナー&シカゴ響などの大物と組んでの録音が盛んに行なわれるようになり、このシューマンもその中の一枚にあたります。
 若きスターのクライバーンと、数々のオーケストラの常任を歴任し経験豊かなライナーの組み合わせというわけですが、演奏の傾向がほぼ同じという点では相性がピッタリともいえますし、なまじ同じなだけに経験の差が感じられる点もあります。
 傾向が同じというのは、クライバーンとライナーの両者とも、叙情的な面を残しながらもそれに過剰に入れ込んだりせず、一つ一つの音は短く切ってキレ良く演奏しています。
 アタックは角が立っており、リズムも弾力的に跳ねるように生き生きとして、軽快に進んでいきます。
 オーケストラもピアノも同じ方向を目指しているため、片方が叙情的ななのに片方は即物的といった衝突が無く、一本の流れに乗っていて、いかにも呼吸が合った共演という雰囲気がします。
 その一方で、クライバーンのソロは、ちょっと力みすぎてるんじゃないかな、と思える部分もいくつかありました。
 特にフォルテの部分で、元気一杯なのは良いのですが、どうも響きが若干濁って聞こえます。ものがピアノなので調律の関係もあるのかもしれません。ただアタックも強すぎてちょっと荒めでもありましたし。
 ライナーの方は、フォルテやアタックを硬くつけても、響きが厚いためあまり濁ったり荒くは聞こえませんし、この辺は力ずくではなく少しセーブして上手くコントロールしているのでしょう。
 クライバーンのソロで、これは良いと思ったのは、むしろ弱いピアノ(強弱記号の)の部分です。
 それもレガートで流れるメロディーではなく、短く切ったスタッカートの音です。
 クライバーンの音は、ピアノでも弱々しいスカスカな音だったりキンキンと鋭く響くようなキツイ音とは異なり、冷たく締まった音ながら響きはソフトで、宙に浮いたように軽くちょっと幻想的な感じがします。
 同じピアノで短い音でも、伴奏のライナーは木のような暖かさがあり、この部分は、どっちが良いというよりも冷と暖でお互いが上手く対比になっていて、しかも基本はどちらも真っ直ぐな音楽なので、丸っきり異質なもののぶつかり合いには聞こえず、そこはあくまで共通した流れの中での変化といったところです。
 経験豊かなライナーが、若いクライバーンを上手くフォローしている演奏ではありますが、クライバーン自身も力強く華やかで、十分にそのフォローに応えています。
 この演奏を聴いていると、クライバーンがその後鳴かず飛ばずになってしまったのが残念で、また不思議でなりません。(2004/12/4)


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