R.シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」

指揮デイヴィッド・ジンマン
演奏チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
録音2001年2月6・7日
カップリングR.シュトラウス 交響詩「死と変容」
発売ARTE NOVA(BMG)
CD番号74321 85710 2


このCDを聴いた感想です。


 澄んだ美しい演奏です。
 透明度の高い湖を上から眺めているように、細かい動きまでクリアに聞き取ることができます。
 しかも、ただ音の分離が良いだけではありません。
 英雄の生涯という曲は、R.シュトラウスらしくメロディーなどの動きが非常にゴチャゴチャと入り混じる曲ですが、その動きが一つ一つ生き生きとしています。
 細かく強弱のダイナミクスがつき表情豊かで、しかもキビキビとして軽く跳ね回っています。
 さらに面白いことに、同時にいくつもメロディーが登場する場合、これがメインのメロディーというのがハッキリと区別されていて、それは他のメロディーよりも強調して扱われています。そのため立体感という点では少し弱まっているものの、横の流れはより明確で、全体の雰囲気はかえって素直に分かりやすく感じられました。
 和音などの伴奏の響きも、絡み合うメロディーたちを周りから薄く包み込むよう感じで、透明で軽いものです。
 メロディーをそのままむき出しにすると生々しく我が強くなりすぎて調和しないのですが、周りから一枚かぶせて音同士を馴染ませることで、全体に一体感が生まれています。
 全体を通してスッキリとした涼しげな演奏なのですが、その代わり迫力はそれほどありません。
 響きに重量感がありませんし、なによりスッキリとしているだけに濃厚なエネルギーとか熱気という点では他の演奏に較べて大きく欠けています。
 しかし、この演奏はそれでも十分に楽しめますし、そもそも、そこを求めていない演奏でしょう。
 たとえ重量感や迫力が無くても、メロディーは生き生きとしていますから、決して表情の無い無味乾燥の演奏ではありませんし、厚い響きなどから圧迫を受けない分、むしろより魅力的に聞こえます。
 肩に力を入れて緊張感高く聞くのではなく、リラックスして穏やかな気持ちで明るく澄んだ響きに浸りたくなる演奏です。

 シュトラウスに限らず、ジンマンのチューリッヒ・トーンハレのシリーズの良いところは、CDの値段がとんでもなく安い点にもあります。
 わたしは、最初にこの「英雄の生涯」と「死と変容」がセットになった単品を買い、後にR.シュトラウスの管弦楽曲集のセットで買い直したのですが、その買い直した方のセットは、CD7枚組みで、たしかたった1500円前後の値段でした。
 中古ならともかく普通の新品でこの値段、しかも、まだ全部は聞いていませんが、英雄の生涯と同レベルであれば演奏も期待できるのですから、これは嬉しいですね。
 このARTE NOVAのレーベルは、スクロヴァチェフスキーのブルックナーも出していますし、見かけると買いたくなってしまいます。
 一つ問題があるとすれば、つい買いすぎて聞く方が全く追いつかなくなるという点でしょうか。最近では「早く聞かないと、早く聞かないと……」と強迫観念に襲われる様になってしまいました。(2006/4/15)


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