R.シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」

指揮ウィレム・メンゲルベルク
独奏Vn:フェルディナンド・へルマン
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1941年4月
カップリングR.シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」
販売DUTTON
CD番号CDEA 5025


このCDを聴いた感想です。


 この曲は以前、ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団を指揮した演奏について書きましたが、今回は後年のコンセルトヘボウとの録音です。
 前に書いたとき、この演奏については、バランスがあまりにも悪すぎると書きましたが、今回のCDを聴いて非常に聴きやすくなっているので取り上げることにしました。
 その当時まででわたしが持っていたのは、キングレコードが出していた国内盤とTELDECから出ていた輸入盤だけだったのです。
 TELDECからの輸入盤はキングレコードの国内盤に較べて雑音が少なくなっており、編集のミスも修正されていましたが、正直言って五十歩百歩というところでした。
 両方ともバランスが悪いのは変わりは無く、ニューヨーク・フィルとの旧録音と較べて魅力が少なかったのです。
 わたしも、この演奏については、ほとんど諦めかけていたのですが、ある日フラッと立ち寄った渋谷の某タ○ーレコードで、この演奏ではないのですが、他の演奏で「音が良いと評判のメーカー」と謳い文句が書いてあったのを見かけ、その後メンゲルベルクのコーナーで、このメーカーのCD(つまりこのCDです)を見つけたので、ダメでもともとで試しに買ってみたのです。

 そして家に帰って聴いてみると……とても驚きました。

 今まで聴いていた演奏とは全く違う音が聞こえてきました。
 今までのCDではわからなかった細部の部分までハッキリ聴き取れ、しかも音に奥行きがあるのです。
 バランスもまだトランペットが強いのですが、他が改善されたのでそれほど気にならなくなっています。
 細部の部分がハッキリ聴き取れる点はともかく、音に奥行きがあるのは、わたしは後から電気的に効果を加えたのではないかと思います。
 そうでないと、あまりにも今までのCDと違いすぎるのが説明つかないので(笑)
 しかし、音に奥行きが加わっているおかげで非常に聴きやすく、かえって今までのCDではわからなかったこの演奏の魅力がわかりました。

 さて、演奏のほうですが、以前のニューヨーク・フィルの時と較べて、はるかに恣意的になっています。
 テンポの伸び縮み、特にここぞという時に急激にテンポを遅くする傾向が確実に増えています。
 さらに、初めのほうなどはゴツゴツしていて無骨な感じを受け、スマートさという点では劣るかもしれません。
 しかし、全体的に線が太く、いかにも英雄らしいスケールの大きな演奏です。
 ヴァイオリンソロも、ポルタメントを駆使した甘い演奏ではなく、どちらかというとテンポの伸び縮みをアクセントに使った迫力のあるソロです。
 ただ、トランペットが妙にベッタリ吹いているのがどうも好きになれません。バランスはかなり良くなったのですが。しかも音程がかなりアブナイような気も……
 また、全体を通してのテンポ自体は意外と速めです。
 しかもそれは遅いテンポの部分に顕著に表れています。しかし、テンポの速い部分は、逆に他の人の演奏較べると遅いほうなのです。
 早い話が、「英雄の戦い」の部分だけが遅く、他の部分は速く演奏しているのです。
 そして全体としては42分ぐらいですので、他の人が概して45分以上かかっているのを考えると速いほうでしょう。
 実はリヒャルト・シュトラウス自身が残した録音は39分台らしいのですが……

 世間では、後から付け加えた電気的な効果というのは、もとの録音のイメージを歪めるという点で、評判が悪いようですが、このようにイメージが好転した例もあるのですから、そう捨てたものではないと思うのですが……(2000/8/5)