R.シュトラウス 交響詩「ドン・キホーテ」

指揮フリッツ・ライナー
独奏Vc:アントニオ・ヤニグロ
Vla:ミルトン・プレーヴス
Vn:ジョン・ウェイチャー
演奏シカゴ交響楽団
録音1959年4月11日
カップリングR.シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」
発売BMG(LIVING STEREO)
CD番号09026-68170-2


このCDを聴いた感想です。


 ドン・キホーテという曲は物語を題材にしているだけあって、音楽がどんな場面を表しているかは、かなり明確にイメージすることができます。
 そもそも楽譜からして、「羊の群れ」や「空中騎行」などに代表されるように、耳に聞こえる音、目に見える物などを、そのまま音符にしていて、音楽を聴けばすぐに、写真や映画でも見るように、具体的な映像が目に浮かんできます。
 ライナーの演奏からも、もちろん鮮明な映像が見えてきます。しかし、映像として見えている外面的な部分だけでなく、それ以上に、感情といった内面的な動きが色濃く表れているように感じられます。
 その感情も、思考よりもまず行動をモットー(?)とするドン・キホーテらしく、基本的に明快で明るく、なによりも暖かさがあります。
 これは、多くの楽器が一度に登場するフォルテの部分より、必ずしもピアノとは限らないのですが少ない人数で小さくまとまっている部分の方がよくわかります。
 まず音色自体があまり細く鋭い音ではなく太くて柔らかい音色で、布袋様を思わせるような福々しい暖かみを生み出しています。
 さらに歌わせ方も、それほど極端ではないにしてもテンポを微妙に伸び縮みさせていて、一定のテンポでがっちり固めた時のような杓子定規な冷たさが無く、融通が利かせられる余裕からくる暖かさがあります。
 ただ、この暖かさは、どちらかというと、ドン・キホーテ本人の感情というより、ドン・キホーテの周りの人の、『このおっさん、いろいろ騒動を巻き起こすけど、なんか憎めないんだよなぁ』という、見守っている感覚により近いのかもしれません。
 実は、ドン・キホーテ本人の最大の象徴であるヤニグロのチェロが、暖かいというよりもむしろ太い音で威厳があり、もっぱらオーケストラの方に一歩引いた暖かみがあるため、よけいにそう感じます。
 一方、オーケストラ全体で演奏するフォルテの部分は、ライナーとシカゴ響の強みが十分に発揮されていて、糊のきいたシャツのように、隅々まで折り目正しい、堅牢な響きです。
 揺ぎ無く整然としていて、一分の隙もありません。
 しかも、この演奏はステレオ初期の録音のため、楽器間の音の分離が良過ぎてかなり細かい動きまで聴き取ることができるのですが、これがまた末端に至るまで正確に弾けているので、余計にシカゴ響の優秀さが際立って聞こえます。(2004/3/6)