R.シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」

指揮ブルーノ・ワルター
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1952年6月19日
カップリングワーグナー 歌劇「さまよえるオランダ人」序曲 他
「Bruno Walter conducts Concertgebouw」の一部
発売WING
CD番号WCD 26


このCDを聴いた感想です。


 キレの良い音で真っ直ぐに突き進んでいく演奏です。
 テンポ自体、割と速めというのもあるのですが、硬めの音による締まった響きで、音の終わりを短くスパッと切っていたりと、よく歌うワルターをイメージしているとちょっと戸惑うくらい直線的な進め方です。
 なかでも、そういう印象を抱かせる大きな要因はティンパニーです。
 輪郭のはっきりした硬く締まった音で、その鋭い一発一発は、たとえ他の楽器の響きが緩んでいても、一気にビシッと締まった響きに変えるだけの存在感があります。さらに個人的な好みになりますが、わたしはこの曲のティンパニーの動きが好きで、特にリズムを際立たせて欲しいと思っており、この演奏はそういう欲求を存分に満たしてくれたところも好印象です。ただ、録音の具合でティンパニーはバランス的にかなり強く、人によっては大きすぎてうるさいと感じる人がいるかもしれません。
 基本的に曲の最初から最後までこの直線的な路線で、ところによっては、切迫感を出すためにテンポをどんどん速めることまでやっているワルターですが、その一方で、全く別の音楽のように大きく歌っている部分もあります。
 当り前と言ったら当り前ですが、それは長いメロディーの部分で、例えば弦楽器などによく登場する「ミ、ミーーファミレラシソ(in E)」といった途中で3連符が混じるメロディーや、同じメロディーの中間のヴァイオリンのソロなどで、さすがにテンポを引き伸ばしたりはしないものの、遅くなるギリギリまで目一杯歌い、それまでの硬く直線的な世界とは丸っきり対照的な優雅で柔らかい歌の世界を見せてくれます。
 もしかしたら、それまで速いテンポで硬く演奏していたのも、その柔らかさを引き立たせるためなのかもしれません。ただ、個人的にはその柔らかい歌よりも、それまでの硬い世界の方がより強く印象に残りましたが……
 さらに、メロディーの優雅で柔らかい世界をもう一段階発展させたのが、後半の、ホルンから始まる大きなメロディーです。後年、交響詩「英雄の生涯」の勝利の場面で使われた象徴的なメロディーですね。
 このメロディーでは、優雅と柔らかさに力強さが加わり(もともとそういうメロディーではありますが)、ゆったりと雄大な世界が広がります。
 小節をいっぱいに使って大きく高く歌い、しかもテンポはさほど遅くならず、リズムや細かい動きは鋭く締まっているため、歌が強調されすぎてもたれるということもありません。
 たしかに、録音状態は1950年代前半のライブ録音ということもあってあまり良くなく(といっても年代相応といったところですが)、R.シュトラウスの演奏ではそれは大きな痛手なのですが、それを差し引いても、この優雅なメロディーと締まった響きは聴いて良かったと思いました。

 ワルターとコンセルトヘボウ管というのは、実は関わりが深く、そもそも1934年から1940年まで常任指揮者を務めていたぐらいなのですが、なぜかあまり録音を見かけません。
 このCDに収録されているドン・ファンと同日のモーツァルトの第40番と戦前の「さまよえるオランダ人」序曲の他は、2、3枚出ている程度で、他のオーケストラとの共演に較べて寂しいものです。
 まあ、そう考えると、この演奏は貴重なのかもしれません。本当は、戦前の常任指揮者時代の録音があれば、いろいろ出して欲しいものなんですが。(2005/1/29)


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