R.シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」

指揮ジョルジュ・プレートル
演奏シュトゥットガルト放送交響楽団
録音1995年9月29日
カップリングR.シュトラウス 組曲「薔薇の騎士」 他
発売hänssler
CD番号CD 93.012


このCDを聴いた感想です。


 ある意味、もっともインパクトがあったのが1stトランペットです。
 他の演奏ではたいてい主役級に目立っている1stトランペットですが、この演奏ではバランス的にかなり弱く、そもそも他のパートに埋もれ気味でほとんど目立っていません。
 そんな1stトランペットも、曲の後半では、他の楽器を全て伴奏にまわしてたった一人でメロディーをソロで延々と吹く場面があります。
 ここは、トランペットが聞こえないと本当にメロディーが無くなってしまうので、他の部分はいくら抑えていてもここだけはトランペットを思い切り出すだろうと思ったのですが、これが全然聞こえてこないのです。
 それでもメロディーの頭の方は薄っすらとメロディーが聞こえてくるので、最初は、「おや? こんなところまで抑えたバランスにするのかな?」と思ったのですが、なんだか様子が違います。
 後半は、どんなに耳を凝らしてもトランペットが聞こえません。
 どうやら、少なくとも途中からは完全にトランペットはいなくなってしまったようです。
 改めて仔細に聴き直してみて、事情がなんとなくわかりました。
 このメロディーは、途中でホルンが朗々と吹き上げる『ドー↑ドーーーーシラソシラ……』というゆったりとしたメロディーなのですが、この演奏の1stトランペットは『ドー↑ドーーーー……』と、ドからオクターブ上のドに上がって伸ばしているところまでは良かったのですが、そこから下に下りるタイミングを失ってしまい、1小節ほど遅れた挙句、そこで完全にパニックになってしまったのか、結局ソロの部分はずっと落ちっぱなしになってしまいました。
 つまり、この部分はメロディーが無く伴奏だけが延々と続いているという、非常に妙な雰囲気なのです。
 いやー、一発物のライブは怖いですね。これがもしスタジオ録音のセッションだったら完全に録り直しだったでしょう(笑)

 まあ、トランペットはさておき、他で特徴があったのはテンポです。
 それも、ゆったりした部分での。
 これが、冒頭のような速い動きのメロディーの部分では、いたって普通に一定の速めのテンポで進んでいくのですが、途中からの、ヴァイオリンのソロやオーボエのソロが吹くようなゆったりとしたメロディーの部分になると急にテンポが変わります。
 もともと、楽譜の指定からしてtranquillo(穏やかに、静かに)とあるので、ある程度テンポが遅くなるのは見込んでいるとは思いますが、プラッソンがやっているのは、ある程度どころではありません。
 速度記号で二つ分くらいはゆうに落ちたのではないかと思うぐらいガクッと落とし、その中でゆったりとしたメロディーをこれでもかと力一杯に歌わせているため、ただでさえ遅いテンポがさらに伸び縮みしています。
 もちろん、それと同時にその歌い込みっぷりは、他の演奏ではちょっと聞くことができないぐらいの表情の濃さを生み出しています。
 その一方で、ゆったりとしたメロディーの後、速い動きのメロディーではちゃんとテンポが元の速いテンポに戻っている点はさすがなのですが、あまりにもゆったりとした部分でのテンポが遅いため、全体での演奏時間は、他の演奏が遅くても大体17分台で収まっているのに、この演奏は19分近くかかっていたりもしますが。(2003/12/20)