R.ハリス 交響曲第4番 <民謡交響曲>

指揮ウラディミール・ゴルシュマン
演奏アメリカ祝祭管弦楽団
(アメリカン・フェスティバル・オーケストラ)
アメリカ祝祭合唱団
録音1960年5月7・9・10日
カップリングクレストン 弦楽合奏のためのグレゴリオ聖歌
発売VANGUARD
CD番号OVC 4076


このCDを聴いた感想です。


 民謡交響曲といわれるだけあって、民謡(フォークソング)を基にしたメロディーがふんだんに使われています。
 この曲は全7楽章で、各楽章は長くても10分弱で、全曲を通しての演奏時間も40分弱といったところで、それぞれの楽章の主要なメロディーは、「間奏曲」と題された2曲を含めて、全て、アメリカの昔の民謡か、民謡風の音楽です。

 第1楽章の「The Girl I Left Behind Me」は、南北戦争の頃に景気をつける時に歌われた曲だそうで、ノリの良い陽気な曲です。

 第2楽章の「Western Cowboy」は、一言で言えば、学校の音楽の授業で習った人も多い「駅馬車」です。
 いえ、雰囲気が似ているとかそういうのではなく、その曲そのものなのです。
 子供の頃歌った記憶よりは、だいぶテンポが遅いのですが、正しく同じ曲で、考えてみれば、あの曲はもともとアメリカ民謡でしたね。
 CDについているリーフレットによると、この曲は「O Bury Me Not on the Lone Prairie」という名前で、この楽章には、他にも二つの民謡が使われています。それぞれ「Old Chisholm」、「Laredo」という名前の曲で、どちらも大らかでゆったりとした曲です。

 第3楽章は間奏曲で、民謡風ではあるのですが、実際に名前のある民謡を基にしたものではないようです。
 この楽章と同じ間奏曲である第5楽章には合唱が入らず、オーケストラのみなのですが、この第3楽章は、弦楽器とパーカッションのみの組み合わせで、スケルツォのようにユーモラスな雰囲気があります。

 第4楽章の「Mountaineer Love Song」は、「He's Gone Away」という曲を基にした、南部の山(アパラチア辺りか?)の人々のラブソングで、少し暗めですが、苦しさや悲壮感は無く、ゆるやかでリラックスできる曲です。

 第5楽章も、第3楽章と同じく間奏曲なのですが、こちらは「Jump Up My Lady」という曲が基になっています。
 この曲は、コープランドのバレエ音楽「ロデオ」の第4曲「ホー・ダウン」の途中に出てくる、冒頭とは違う二つ目のメロディーとほとんど同じです。
「ホー・ダウン」より少しテンポが緩やかですが、第3楽章同様スケルツォ的で、遊び心の感じられる曲です。

 第6楽章の「Negro Fantasy」は、「Little Boy Named David」と「De Trumpet Sounds It in My Soul」という二つの黒人霊歌が基になっています。
 遅いテンポの曲で、曲調も決して暗い一辺倒ではないのですが、夏の昼下がりのように物憂げで、まるで遠くで鳴っているように聞こえるミュートされた金管の響きが、あたかも嘆きのようで、どことなく悲しげな雰囲気が全体に漂っています。

 第7楽章の「When Johnny Comes Marching Home」は、そのまんま「ジョニーが凱旋するとき」という有名な曲がモチーフです。
 この「ジョニーが凱旋するとき」という曲は、この民謡交響曲に限らず、他の曲に入っている場合や単独で聴いた時も毎回思うのですが、とても凱旋したとは思えないような、勇ましくも暗い、いわば悲壮感いっぱいの曲なのです。もしかして、本当は、凱旋した時じゃなくて、いまから出征するとか、凱旋するにしても無言で帰って来たんじゃないかと邪推したくなってしまいます(笑)
 また、ハリスは、この民謡交響曲を完成させる7年前に、同じ「ジョニーが凱旋するとき」というタイトルで管弦楽曲を作曲しているらしいので、この終楽章は、そのまま流用しているか下敷きにしているのかもしれません。

 全体としては、メロディー自体は、民謡を基にしているので非常に耳に馴染みやすいのでが、リズムやオーケストレーションはなかなか凝っています。
 基となった民謡は、大抵はメロディーだけでなくリズムも単純だと思いますが、ハリスはシンコペーションを絡め、変化をつけることで、音楽に奥行が感じられるようにしています。
 和声も減和音をあちこちに用いて、緊張感を出したり、逆にパーカッションを使って、より華やかにしている部分もあります。
 特に、凝っているのが、メロディーに絡んでくる対旋律の伴奏です。
 主旋律が民謡調なのでちょっと田舎っぽくて暖かいのに対して、対旋律はシャープで少し近寄り難いような冷たさがあります。
 この全く異なる二種類の旋律が組み合わさる事で、お互いがより引き立ち、聴き応えのある曲になっています。

 指揮しているゴルシュマンは、セントルイス響の指揮者として知られていますが、演奏しているアメリカ祝祭管弦楽団(American Festival Orchestra)は、初めて聞く名前です。
 CDも、この演奏と、後に映画音楽の一枚があるだけですし、そもそも名前こそ同じですが、このCDのオーケストラと、後の映画音楽のCDのオーケストラが、本当に同じオーケストラなのかどうかさえわかりません。
 なにせ、1960年前後といえば、シカゴ響がRCA響と称していたりと、契約の関係で既存のオーケストラが変名を使う事がまだあったので、このオーケストラも、他のオーケストラの変名の可能性もあるのではないかと思います。
 とりあえず、聴いた感じでは、テクニックも結構しっかりしていますので、無名の一オーケストラともあまり思えませんでしたので。(2003/3/22)


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