R.ハリス 交響曲第3番

指揮レナード・バーンスタイン
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック
録音1985年12月
カップリングW.シューマン 交響曲第3番
発売ポリドール(Grammophon)
CD番号POCG-2386(419 780-2)


このCDを聴いた感想です。


 ロイ・ハリスの曲は、ジャズなどの要素を取り入れていないこともあり、純音楽的な傾向が強く、いわゆる「現代音楽」ほどではないにしてもわりととっつきにくい音楽……という評判を耳にしていました。
 わたしは、今までに第4交響曲(民謡交響曲)しか聴いたことが無く、それは噂とは違って馴染みやすかったのですが、その曲はメロディーはよく知られている既存の曲から採られているので、例外だと思っていました。
 今回の第3交響曲は、メロディーもオリジナルということで、初めて聴くときにはけっこう覚悟して聴いたのですが、聴いてみると意外や意外、思ったよりもはるかに聴きやすい音楽でした。
 この曲は、形式上はシベリウスの交響曲第7番のような単一楽章で、最初から最後まで切れめはありませんが、内容としては大きく五つに分けられます。
 最初の部分はは作曲者の解説によると「悲劇的」という題がつけられていて、その名の通り少し暗めです。
 ただ、印象としては「悲しい」というよりも、「深い」とか「広い」という言葉の方がピッタリときます。
 弦楽器によるメロディーが大きく広がり、それが沈み込んでいくようで、構造としては大掛かりで底知れぬ深さがあるのですが、それを聞いて感情として悲しいとか寂しいとかそういうイメージは浮かんできません。
 メロディーが絡み合ったりと立体的な面に注目すれば面白いのですが、情緒的には薄く、曲の最初なのに、曲の中ではこの部分が最もとっつきにくいのではないでしょうか。
 二つ目の「叙情的」も、最初の「悲劇的」の延長みたいなもので、雰囲気はよく似ています。
 ただ、深さと広さが増し、よりスケールの大きな音楽へと変わっていきます。
 強弱も、「悲劇的」がピアノからメゾ・ピアノが基本だったのに較べ、フォルテやフォルティッシモも増え、激しさが加わります。名称は「叙情的」なのに、メロディーは前と同じ傾向のあまり情緒が無い、ちょっと無機的なメロディーですが、激しいため、それが攻撃的に聞こえ、こちらには興奮があります。
 三つ目の「田園的」は、前半は「悲劇的」の激しさが抑えられ、ピアノに戻ります。
 メロディーも情緒が加わり、ゆったりとして、正に田園的です。
 しかし、それも前半だけで、途中から次第に激しさが増していき、後半のティンパニーの強打に続いて弦楽器がユニゾンで力強くメロディーを弾くところからは、曲自体が大きく様変わりして、華やかで格好の良い、非常に聴きやすい曲に変わります。
 印象的なファンファーレ風のメロディーに、簡潔な構造。それまでの複雑に入り組んだ構造が嘘のようです。
 正確には四つ目の「劇的」の部分で、メロディーがポリフォニックに絡み合うのですが、メロディー自体がその前と同じファンファーレ風の特徴あるものなので、メロディーが明確すぎて全然複雑な印象を受けません。メロディーが重なり合って登場しても、むしろメロディーが強化されてわかりやすくなったように思えたぐらいです。
 最後の「劇的−悲劇的」では、それまでのメロディーは残して、それに、最初の「悲劇的」で登場した、深くて広い大きな構造が重なります。
 個人的には、冒頭の時には、大掛かりな構造ばかりが目立って情緒が抜けていたところに、「田園的」で登場したメロディーが加わることで穴が埋まり、うまく完全な形になっているのではないかと感じました。
 たしかにジャズや民謡のような既存のポピュラーな音楽を取り入れていませんし、そういう意味では耳に馴染みは薄いのかもしれませんが、それほど難解というほどでもありませんでした。もちろん構造や細かい細工までとても理解できているとは言えませんが、少なくてもそれがわからなくても十分に楽しめました。
 まあ、ここまで楽しめたのもバーンスタインの指揮だからというものあったかもしれません。
 他の指揮者の演奏を聞いていないので、あくまでも推測ですが、他の曲の演奏の傾向からして、おそらくかなり劇的に演奏しているのではないかと思います。
 より激しく華やかになり、それも聴きやすかった要因の一つでしょう。(2006/8/19)


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