P.I.チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

指揮ユージン・オーマンディ
独奏Vn:ブロニスラフ・フーベルマン
演奏フィラデルフィア管弦楽団
録音1946年3月
カップリングモーツァルト ヴァイオリン協奏曲第4番
販売Music&Arts
CD番号CD-299


このCDを聴いた感想です。


 フーベルマンが独奏するチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、以前にも感想を書いた事がありますが(こちら)、それが1929(8)年のスタジオ録音だったのに対して、こちらは、それから15年以上も経過した後で、しかもライブ録音です。
 前回の演奏のフーベルマンの独奏には、テンポを自由に揺らしていながらも、その芯には確固としたテクニックの裏付けがあったのですが、今回の録音はライブというハンデもさることながら、15年という歳月が大きく、テクニックにかなりの衰えを感じました。
 例えば、前回の演奏では、いくらテンポを揺らしても、あくまでもフーベルマンのコントロールの下であるという安心感があったのですが、今回のテンポを揺らし方を聴いていると、もしかしたらフーベルマン本人にも音楽がどっちの方向に向かおうとしているのか見当がついてないんじゃないだろうか? と不安に思えてくるぐらい、テンポが大きく逸脱していきます。
 曲の頭の方なんて、標準のテンポなんて無いんじゃないだろうか? と疑いたくなるくらいテンポが自由自在……というか、ほとんど勝手気ままに弾いているように思えるほどで、一寸先のテンポすら予測がつきません。
 逆に、見方を変えれば、スリル満点の緊張感のある音楽とも言えます。
 これに加えて、フーベルマンの以前からの特徴であるポルタメントは健在で、これを駆使した、水あめのように甘くネットリとした歌わせ方は、現在ではまず聴く事はできないでしょう。

 独奏のフーベルマンが、自由自在にテンポを揺り動かしているのにもかかわらず、バックのオーケストラは驚くほどピッタリくっつけています。
 わずかな乱れが数箇所あるだけで、後はほとんどスタジオ録音と言われても信じてしまいそうなぐらい独奏者の動きに敏感に反応できています。
 さらに、独奏者にただピッタリとつけるだけでなく、自己主張もしっかりしていて、第1楽章なんかでは、独奏者に振り回されるどころか、ヴァイオリン独奏が休みでオーケストラだけが演奏しているところでは、逆にテンポアップして独奏者を煽ったりさえしています。
 この辺りはいかにもライブらしいとこで、聴いていて嬉しくなってくるのですが、案外、独奏者に引きずられてどんどん前のめりになってしまっただけかもしれませんが(笑)
 また、第2楽章では、フーベルマンがかなりロマンティックにメロディーを歌わせているのに合わせて、オーマンディとフィラデルフィアのコンビにしては珍しく(…とわたしが思っているだけかもしれませんが)しっとりとした湿度の高い音色と歌わせ方で音楽を作っています。
 これが第3楽章になると、さすがにフーベルマンもほとんどテンポを動かしません。
 その代わり音楽のキレが良く、中間部のゆったりとしたメロディーも、ポルタメントを使っていながらも甘いというよりもっと太く骨がある歌わせ方をしています。
 バックのオーマンディとフィラデルフィア管の方は、パワーでフーベルマンを支えています。
 もちろん、オーケストラの方も音のキレは良いのですが、それ以上に炸裂するパワーに圧倒されます。こういう風にパッとあっさりパワーで圧倒できてしまうところも、オーマンディとフィラデルフィア管の凄さなんでしょうね。(2002/11/1)