P.I.チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調

指揮アルトゥール・ロジンスキー
独奏Vn:エリカ・モリーニ
演奏フィルハーモニック・シンフォニー・オーケストラ・オブ・ロンドン
録音1956年9月
カップリングブラームス ヴァイオリン協奏曲
販売ワーナーパイオニア
CD番号WPCC-4188


このCDを聴いた感想です。


 まず最初に、この伴奏をしているオーケストラですが、フィルハーモニック・シンフォニー・オーケストラ・オブ・ロンドンというクレジットですが、実体はロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団です。
 有名な話ですが、当時は契約上の関係でロイヤル・フィルの名称が使えなかったため、そんな名称を使用していたとのことです。現在販売されているCDでは、本来のロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団になっていますが、このCDでは、まだフィルハーモニック・シンフォニー・オーケストラ・オブ・ロンドンのままでした。
 この名称を使うことは、二度と無いと思いますので、記念にこの名称で記しておきます。
 ただ、ここから下では、長ったらしいので、ロイヤル・フィルと言ってしまいます。

 実は、このCD、わたしが初めて買ったチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のCDなのです。
 もう、かれこれ10年ぐらい前になりますが、今は無き、池袋にある某WAVE(地下にあった頃)に行った時、『WestminsterのCDを手に入れる最後のチャンス! 在庫限り! 今後WestminsterがCD化される予定はありません!』と書いてあったので、思わず買ってしまったのです。
 ……その後、WestminsterがリニューアルしてCD化されたのは、みなさん周知の通りです(笑)
 まあ、その間が10年近く開いていた事を考えると、あながち宣伝文句が嘘とばかりは言えませんが。
 で、そのCDがわたしにとって、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の初めてのCDであったと共に、ロジンスキーとロイヤル・フィルを聴いた初めてのCDでもあったのです。
 今は好きな指揮者とオーケストラですが、このCDを聴いたときは、全くノーマークでした。
 しかし、このCDを聴いて、「実は、このオーケストラと指揮者、凄いんじゃないか」と思うようになり、後にベートーヴェンの交響曲第5番を聴いたときに、確信しました。
 わたしのCD鑑賞の歴史の中でも、重要なポイントとなった一枚です。

 そして、今でもチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のCDの中で、最も好きな演奏の一つです。

 この演奏で、わたしが最も好きなのは、127小節目からのModerato assaiになった部分です。
 この部分は、ソロ・ヴァイオリンは休みで、弦楽器がフォルティッシモでユニゾンに近い形で主題を堂々と弾き、管楽器が、「タンッタカタタタタタ…」という風に、リズムを刻んでいます。
 弦楽器群はとても堂々としていますし、それに輪をかけて素晴らしいのが金管楽器、特にトランペットです。
 バランス的には、かなり強めに出ているのですが、歯切れが良く、シビれるほどにカッコイイのです。
 このパターンは第1楽章には2回出てくるのですが、その1回目の方は、主題のフレーズを繰り返します。
 その繰り返す直前(134小節目)で、一旦ちょっと落として、3拍目と4拍目の八分音符を少し長めにして急激にクレッシェンドしていくところなど、何度聴いても興奮します。
 この部分だけは、他の演奏で満足したことは一回もありません。
 ただ、このオーケストラは、管楽器を中心に音がかなり明るめなので、他の人が聞いたときにそう感じられるかは、ちょっと疑問です。

 逆に、わたしの中で割を食ってしまったのは、かえってソロの方かもしれません。
 あまりにも、バックのオーケストラの印象が強烈で、ソロの印象が薄くなってしまったのです。
 もちろん、だからといってソロのエリカ・モニーニが個性が薄いというわけではありません。
 いや、むしろメロディーの歌わせ方などは、独特なものがあり、感情が思いっきりこもっていながら、気品を失わないという点を考えると、かなりのハイ・レベルであるのは間違いないと思います。
 ソロで最も印象に残ったのは第3楽章です。
 これは他にもやっている人がいると思いますが、349小節からpoco meno mossoになって、第2主題になるのですが、そのメロディーの一部の364小節目でソロが四分音符でHを弾いた後、八分音符のGに上がるとき、楽譜に無いハーモニクスを加えているのです。
 このハーモニクスの入れ方が、さりげなく、しかし可憐に入っているのです。
 これだけでも、わたしは、この演奏の元は取ったと思ったぐらいです(笑)

 ただし、この演奏は、この当時の演奏のご多分に漏れず、大きなカットがあります。
 全て第3楽章ですが、小さなチョコチョコしたカットから、大きなバッサリ切ったカットまで、選り取りみどりです。
 前回のフーベルマンの時のカットよりはマシとはいえ、多いことにはかわりありません。
 わたしはカットに慣れているので(……というか、カットした演奏しか聴いたことがなかった(汗))、あまり気にならないのですが、曲を良く知っている人ほど、気になるのではないかと思います。
 ……しかし、この曲、みんな何でカットしたがるんでしょうかね?(2001/3/30)