P.I.チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調

指揮ウィリアム・スタインバーグ
独奏Vn:ブロニスラフ・フーベルマン
演奏ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音1929年
カップリングラロ スペイン交響曲 他
販売Pearl
CD番号GEMM CD 9332


このCDを聴いた感想です。


 あらえびすさんが書かれている名曲決定盤(中公文庫)の中で、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏の中では、最上のものとされています。
 「名曲決定盤」の出版が1939年なので、当然、それまでに出ていた演奏の中で比べての話ですから、現在出回っている演奏の10%にもみたいない量の中での聴き比べでしょうが、現在でも一面では当たっていると思います。
 すなわち、チャイコフスキーのロマンティックな部分をこれほど徹底して美しく端正に仕上げた演奏は、今に至るまで無いと思えるからです。
 そこまで言い切れる理由は、音楽の流行が、当時と比べて大きく変っているからです。
 音楽の表情を、ポルタメントやテンポの極端な変化で、厚化粧といえるほど化粧させる演奏は、今やったら、それこそ「くどいっ!」の一言で終りでしょう(笑)
 実際、自分が演奏会で聴く事を想像してみると、確かに「ちょっとな〜」と思いかねません。
 劣悪な録音のCDだから、良い気分できけるのかもしれません(笑)
 まあ、こうやってCDで聴いている分には、非常に美しくかつ楽しい演奏です。
 後年のライブ録音とは違って、腕はまだしっかりしており、音程のとり方も確かです。
 この全盛期のテクニックで、自在にテンポを揺らしたり、ポルタメントを入れたりするものですから、聴いてる方にとっては、もうたまりません(笑)
 「誘惑してくる貴婦人」といった感じで、高貴さと妖艶さが巧妙に組み合わさっています。
 ただ、録音が古いせいもあるのですが、ロシアっぽさというのはほとんど感じられません。
 荒っぽさや、土臭さは無く、貴族的な優美さが優っています。(しまった! ロシアにも貴族制があったっけ、そういえば…(汗))
 また、テンポの速い第3楽章などは、フーベルマンの全盛期のテクニックが伺えます。
 かなりスタッカート気味に演奏し、キレの良さを生み出しています。
 これは、後年のライブ録音と最も大きな違いが出ている部分です。
 音楽性は維持若しくは発展できても、テクニックばかりはさすがに衰えてしまいますので…

 ところで、この演奏は第3楽章に大きなカットがあります。
 この曲の第3楽章のカットというのは、現在にいたるまで生き残っていて、いつだったかパールマンの演奏でカットをしていました。
 ……よーく考えると、わたしの持ってるCDでは、ノーカットの演奏が一枚もなかったような……(汗)
 とまあ、カット自体はよくある事なのですが、カットする部分は大体共通しています。
 ところが、フーベルマンの演奏は、カットする部分がかなり違っています。
 通常カットされる部分はちゃんと演奏して、普通ならカットしないような部分がカットされています。しかも大幅に(笑)
 慣例のカットをした演奏でさえ8分以上はかかる第3楽章が、6分そこそこで終わるということからも、その凄さがお分かり頂けるかと思います。

 バックのスタインバーグについては、録音が悪すぎて、上手い!……ような気がする(笑) 以上のことは聴き取れません。
 録音状態も、1929年ということを考えると、こんなもんかなーって感じです。
 雑音は少ないんですけどね。
 ソロヴァイオリンはかなり鮮明なのですが、バックは埋もれちゃってます。
 ちなみに、バランスも大幅にソロヴァイオリンよりです。
 録音状態に関しては、さすがに後年のライブ録音の方が、かなり良くなっています。(2000/12/14)