P.I.チャイコフスキー マンフレッド交響曲

指揮リッカルド・ムーティ
演奏フィルハーモニア管弦楽団
録音1981年7月
販売EMI
CD番号CDM 7 64872 2


このCDを聴いた感想です。


 この演奏を初めて聴いた時、「なんてつまらない演奏なんだ」と思いました。
 そして、「こんな演奏をするムーティっておもしろくない指揮者なんだな」と決め付けていました。

 このCDを買ったのは、3〜4年前なのですが、聴いた最初の印象が上記の通りのため、すぐにお蔵入りさせてしまい、滅多に聴きなおすことはありませんでした。
 その後何年かが過ぎ、つい最近、わたしはこの「マンフレッド交響曲」のスコアを購入しました。
 そこで、せっかくCDを持っているのですから、久し振りにスコアを片手に聴き直してみたのです。

 すると…

 驚きました。

 この演奏が、実は非常に魅力溢れる演奏だという事がわかったのです。

 ムーティは、音のバランスをドイツ的な低音に重心を置いたドッシリとしたものにしないで、中高音のバランスを強くして、旋律を重視しています。
 そのため、低音もバスとして下から和音を支えるというより、あくまでも旋律の一部として歌わせるという性格の方が強くなっています。
 まあ、いわばフランス風に近いのですが、オーケストラがフィルハーモニア管ということもあり、華やかさが抑えられている一方、音がまとまって一体感ある音楽になっています。
 低音に重心が置かれていない上、極端な事をなにもしていないために、曲を大づかみで聴いたときに、薄っぺらく聞こえてしまい、最初に聴いたときにはつまらなく感じたのですが、実は細部までよく聴いてみると、絶妙なバランスを維持している、魅力的な演奏だったのです。
 高音低音のバランス以外にも、金管の音量も、初めて聴いたときは引っ込みすぎに感じたのですが、改めて聴いてみると、実はうるさく感じさせないギリギリの音量であり、バランスのとれた最適な音量である事がわかりますし、わたしがこの曲で一番注目している第4楽章の最後に出てくるオルガンにしても、最初は管楽器に埋もれて十分に聴こえてこないと思った音量が、十分にしてもっとも魅力を発揮する音量であると思いました。

 さらに、この演奏のもう一つの大きな魅力は旋律の歌わせ方です。
 特に、第1楽章の真ん中辺りである第171小節目からのアンダンテや、第2楽章のトリオのようなp(ピアノ)でゆったりとしたメロディの歌わせ方は素晴らしく、過剰に歌いすぎず幾分サラッと流しながらも、情緒は豊かなままです。
 最高なのは第3楽章の旋律で、透明度の高い音色と相まって、溜息が出るほど美しい世界を創り出しています。

 それにしても、演奏はやはり一度聴いただけではわかりませんね。
 今となっては、最初に聴いたときにつまらなく感じたのが嘘のようです。
 しかし、今までムーティの演奏は敬遠していましたが、こうなるといろいろ聴いてみたくなってきます。(2001/10/5)