指揮 | ヘルベルト・フォン・カラヤン |
演奏 | ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 |
録音 | 1971年9月16〜21日 |
販売 | Disky(EMI) |
CD番号 | BX 708272 |
一言で言えば『ゴージャス』。また別の一言で言えば『豪華絢爛』。どちらにしろ、この方向をとことんまで突き詰めた、究極の演奏と言っても良いかもしれません。 例えば、ムラヴィンスキーがこの曲を演奏した場合、その演奏は、内面に向かった引き締まったものになります。 一方、カラヤンのこの演奏は、それとは反対に外へ外へと向かった、非常に拡がりのある音楽なのです。 こういう風に外に広がっていく演奏の場合、拡がれば拡がるだけ音の密度が薄くなり、それにつれて緊張感も無くなり弛緩していくのが普通ですが、この演奏にはそんな常識は通用しません。 音は拡がっているのに密度は全く薄くならないのです。 ということは、どうなるかと言いますと……他の演奏の二倍も三倍もの質量がこの演奏からは感じられるのです。 一つ一つのメロディ、リズムの全てが桁外れに巨大な存在感を持っています。 これが、続々と繰り出されてくる様は、ほとんど、野球のオールスターの豪華投手リレーかホームラン打者勢揃いの重量打線みたいなもので、その圧倒的な力の前には『すみません。わたしの負けですから、もう勘弁してください』と思わず言いたくなってくるほどです(笑) カラヤンが、本気でベルリン・フィルを外面に向けて演奏させたらどうなるか、という事の恐ろしさが分かったような気がします。 また、人によっては、この演奏を聴いて『喧しい』と感じる方もいらっしゃるようですが、そう思われるのも当然でしょう。それどころか、わたしは、その喧しさや派手さこそ、この演奏の一番の特徴だと考えています。 ただ、問題は、その点が好きになれるかで、もし、好きになれないなら、残念ながらこの演奏はどうにも良い点が無い演奏ということになります。 ちなみに、もちろんわたしはこういう演奏が大好きです。基本的に派手好きなもので(笑) ところで、カラヤンは、この演奏では、メロディーをかなり大げさに歌わせて、テンポも細かい伸び縮みをしきりに入れています。 さらに、テンポの速い部分では随分激しく演奏させているの聴いて、ハタと思いました。 『実は、この演奏ってメンゲルベルクの演奏に似てないか?』 カラヤンがメンゲルベルクの演奏を手本にしているかどうかは知りませんが、上記の特徴は、そのままメンゲルベルクに当てはまりますし、なによりそういった細かい部分以上に、瞬間瞬間の雰囲気が非常によく似ているのです。 もちろん、カラヤンの方がよりゴージャスで、メンゲルベルクの方がもう少し締まり気味であるという違いもあるのですが、『もし、メンゲルベルクが現代の機器で録音していたら、ひょっとしてこういう演奏だったかもなぁ』という気にさせてくれるぐらい近く感じました。(2002/2/19) |