P.I.チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調

指揮ルドルフ・ケンペ
演奏バイエルン放送交響楽団
録音1975年3月20日
カップリングベートーヴェン 交響曲第8番
発売ORFEO
CD番号C 449 961 B


このCDを聴いた感想です。


 質実剛健で知られるケンペにしては珍しく芝居っ気のある演奏です。
 もっとも、わたしはケンペのチャイコフスキーはこの演奏しか聴いたことが無く、他はほとんどベートーヴェンやブルックナーといったドイツ系の作曲家の曲ばかりしか聞いていないので、チャイコフスキーなどは案外そういう演奏がケンペの標準なのかもしれませんが。
 冒頭のメロディーからすでに、感情を強く込めた歌わせっぷりに驚かされました。
 強弱の差をかなり大きくつけ、フォルテではただ強いだけではなく、重みをつけていっそう強調しています。
 感情がストレートに表に出た表情豊かな歌い方で、感情を表すためなら音色が荒れようとも響きのバランスが多少崩れようともまったく躊躇していません。第1・2楽章ではテンポすらここぞというところでは後ろに引っ張って粘ったりと、メロディーを歌わせて盛り上げることが常に意識されています。
 おそらくケンペは多少強引なくらい積極的にオーケストラを引っ張って自分の音楽を表現させているのでしょう。ライブということもあってか、実力としては最高レベルの一つであるはずのバイエルン放送響なのに、アンサンブルが乱れているところがいくつか目に付きました。まあ、逆にバイエルン放送響だからこそ多少の乱れですんだのかもしれません。テンポなんて 微妙にちょこちょこと変わっていますし、他のオーケストラだったらもっとひどい乱れが出ていたかもしれません。
 細かいところは今一つ揃っていないものの、その代わり、ライブならではの勢いがあります。
 特に第4楽章などは、前半のゆっくりとしたテンポのピアノからフォルテへの力の入った盛り上がりや、アレグロの速いテンポに入って以降のフォルテでどんどん押していく時の迫力は、いかにもライブらしく白熱していて、聞いていて手に力が入りどんどん引き込まれていきます。
 さらに、ただ感情の赴くままに歌いこみ、勢いだけで突っ走っているかというと、それだけではありません。
 主旋律は感情がこもっているだけに目立って聞こえますが、実はバランスとしては対旋律などの脇役がかなり強めに出ています。
 メロディーだけしか出ていないと、いくら歌っていても単なる一本道でしかないのですが、対旋律や伴奏の存在感があることで、ルートが増え、表現に広がりと厚みが加わっています。(2006/6/24)


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