P.I.チャイコフスキー 弦楽セレナード ハ長調

指揮パウル・ヴァン・ケンペン
演奏ラムルー管弦楽団
録音1955年1月,2月
カップリングP.I.チャイコフスキー 組曲第4番<モーツァルティアーナ> 他
発売ユニバーサルミュージック(PHILIPS)
CD番号UCCP-3428(438 3132)


このCDを聴いた感想です。


 野球で言えば「豪速球」の演奏です。
「快速球」ではありません。同じように速くても、決して、バットで当てに行こうとしても捕らえきれずツルッと滑ってしまうキレのある演奏ではなく、バットでたしかに芯で捕らえたと思っても バットごと真っ二つに折られてしまうような力強いものです。
 まず、速さという点では、なんといっても第1楽章のアレグロで驚かされます。他の演奏と較べて2段階ぐらいは速く、ちょっと大丈夫かな、ちゃんと演奏できるのかなと思えてくるほど猛スピードで飛ばして行きます。
 速いテンポでも、昨今の古楽器系の演奏のように、いくら速いテンポでも何事も無かったようにスルスルと弾いていくのであれば、速い演奏でもそれほど驚くほどではなかったのですが、この演奏ときたら、ブースターをつけて加速したかのように強引に前に突き進みます。前方に難しい箇所があっても軽く乗り越えるのではなく、真正面からぶつかってそのまま粉砕していくぐらいの勢いです。
 なにしろ演奏しているのはラムルー管(コンセール・ラムルー)ですから、オーケストラの合奏能力としては少々怪しい部分もあります。ただ、個々の演奏者の技術は結構高いようで、細かい動きなどは全体が一体となって乗り越えるというより、個人の技術でだいぶカバーしています。聴いていると、まるでソリストの集団が弾いているようで、動き自体はちゃんとしていて、しかも輝かしく浮かび上がっているのに、なぜか全体だとバラツキがあるという、なかなか大変な状況になっています。ただ、音楽の方向性は各自がバラバラな方向を向いているのではなく、ちゃんと前に向かって突き進んでおり、この辺りは、ケンペンが上手く全員を導いて、自分のやりたい音楽を徹底させているからでしょう。
 音楽の勢いという点では、第4楽章は第1楽章をさらに上回っています。
 テンポは、第1楽章のように他の演奏より段違いに速いというほどではありません。
 しかし、迫力は、ちょっと他の演奏では感じられないほどです。
 序奏部を過ぎて速いテンポの部分に入ると、短い音符がたくさん登場しますが、そのほとんどが、ただ短いだけでなく、斧で刻み込むようにザクザクと深く、しかも重みをつけて切り込んでくるのです。
 ピチカートなどは、あまりにも強く弾くもので、音程がどんどん低くなってしまうのではないかと心配になってくるほどです。
 音をえぐるように刻みながら速いテンポでグイグイ前に進んでいく音楽は、まさに太陽のようにギラギラとしたエネルギーに溢れていて、どんどん引き込まれていきます。
 いやもう、弦楽セレナードでここまで興奮できる演奏はなかなか無いと思います。(2010/11/27)


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