N.リムスキー=コルサコフ 「金鶏」組曲

指揮ミハイル・プレトニョフ
演奏ロシア・ナショナル管弦楽団
録音1994年4月
カップリングリャードフ ババ・ヤガー 他
「ロシア管弦楽曲集」の一部
発売ポリドール(Grammophon)
CD番号POCG-1962(447 084-2)


このCDを聴いた感想です。


 ロシア(というよりソヴィエト時代)のオーケストラというと、ここぞという部分は有無を言わさず力で押さえ込んでくるという、官僚みたいに高圧的なイメージがありました。
 しかし、ロシアにおける民間オーケストラの先駆と呼ばれるこのロシア・ナショナル管は、そんな『力こそ正義』みたいな雰囲気は全く無く、ほとんど同じロシアのオーケストラとは思えないぐらい穏やかになっています。
 フォルテになっても、力押しどころか、むしろパワーは抑え気味で、それどころか全体的には柔らかいといっても良いぐらいまるで正反対です。
 音色もそれぞれの楽器がベタッと強く自己主張した音ではなく、それぞれの楽器のカラーを近づけ全体に統一感を持たせた音色になり、特に金管あたりは、大きく様変わりしました。
 アクを抜いて聴きやすくしたというところでしょうか。都会風の料理のように薄味の中で繊細な味付けをしているみたいで洗練されているとは思いますが、それまでのロシア的標準だった(あ、旧レニングラードは別か)、とにかく味の濃さ勝負の豪快さで、合わない人にはとことん合わなかった癖の強さが無くなってしまったのは、個人的にはちょっと残念です。
 ただ、ロシア風味が無くなり単なる無個性のオーケストラになってしまったかというとそうでもありません。
 これはオーケストラというより、指揮者のプレトニョフの個性かもしれませんが、響きや歌わせ方はなかなか独特な味があります。
 といってもロシア風の感情をストレートに出したものではなく、逆に一歩も二歩も引いたふんわりと軽いもので、アクセントにしても、これでもかと全体重をかけた強く重いものだったり、鋭くカツンと硬く叩いているのでもありません。ポンっと柔らかくぶつけた後、すぐ力を抜いて響きだけを残します。面白いのはこの響きにかなり強くビブラートを付けていることで、響きがゆらゆらと揺れながら残って消えていくのは、なんだか幻想的です。
 考えてみれば、組曲の基である歌劇の『金鶏』も、幻で語られる内容なのですから、ふさわしいとも言えますね。
 惜しいのは、オーケストラが今一つ揃っていないことでしょうか。
 全体としてはよくまとまっていますし、プレトニョフの指示も各奏者に徹底されていて歌い方も統一されており、各奏者のテクニックも申し分ないのですが、細部のアンサンブルでタイミングが合っていない部分がいくつかありました。
 こういう点は、奏者同士の呼吸なのでしょう。このオーケストラは若い奏者が中心ですし、録音時点では結成されてまだ5年ほどというのもあると思います。レベル自体は高いのですから、きっと現在は大きく前進していることでしょう。(2005/10/1)


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