N.リムスキー=コルサコフ 「金鶏」組曲

指揮ロリン・マゼール
演奏クリーブランド管弦楽団
録音1979年10月19・22・23日
カップリングリムスキー=コルサコフ スペイン奇想曲 他
発売ポリグラム(DECCA)
CD番号POCL-4549(460 873-2)


このCDを聴いた感想です。


『ロリン・マゼールの演奏は、1960年代までは面白かったが、1970年以降、大体クリーブランド管の音楽監督になったあたりから面白くなくなった』という評価を良く耳にします。
 この演奏は70年代末で、ちょうど面白くないというクリーブランド管の音楽監督時代の録音なのですが、まるで60年代の演奏のように、マゼールの個性が強く出た演奏です。

 その個性が最も顕著に表れているのがメロディーの歌わせ方です。
 とにかく、これでもかこれでもかと歌い込んでいます。
 第1曲「宮殿のドドン王」の前半の自由なクラリネットソロなんかは、テンポをかなり自由に伸び縮みさせていますし、他の決まったテンポがある部分は、さすがにテンポ変化こそしませんが、その代わり、非常に激しくビブラートをつけています。
 その加えて、ピアノからフォルテへのダイナミクスの幅も広く、実に生き生きとしています。
 特に強烈なのが、第3楽章でメロディーを担当した時のビオラとチェロで、他では滅多に聴く事ができないぐらい盛大にビブラートをつけていて、「俺たちがメロディーだぜ!」と激しくアピールしてくれます。
 しかも、恐ろしい事に部分的にはポルタメントまで取り入れていて、ビックリするくらい色気があります。
 一方、管楽器は弦楽器ほど大げさにビブラートをつけたりしているわけではないのですが、ダイナミクスにいろいろ変化をつけたり、テンポをほんの少し揺らしたりする事で、弦楽器とは少し異なってはいますが、やはり色気が感じられます。

 また、もう一点、特に強調しておきたいのが、バランスの良さです。
 全ての楽器が均等に聞こえてくるのではなく、聞こえて欲しい楽器が聞こえて欲しい音量でちゃんと聞こえてくるのです。
 なかでも金管・打楽器のバランスは素晴らしく、ちょっとだけ聞こえて欲しいときは、ちょっとだけ、しかしはっきりと聞こえ、前面に出て来て欲しいときには、他の楽器を圧倒しながらも決して消し去ったりはしないという、非常に微妙な塩梅がうまく加減されています。
 さらに、微妙なバランスは保ちながらも、迫力もちゃんと十分にあります。
 第4曲の中盤にある凱旋パレードのシーンなんかは、金管が大活躍するシーンですが、ちゃんとバランスは崩れていません。しかし、ホルンが吼えてトランペットが叫ぶ様は、聴く者を圧倒するような迫力があります。

 この組曲「金鶏」という曲は、録音が少なく、なかなか『これは!』という演奏がありませんでしたので、このマゼールのような演奏がもっと増えて欲しいものです。(2002/7/12)


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