M.トラップ ピアノ協奏曲 二調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
独奏ピアノ:ワルター・ギーゼキング
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1935年10月24日
発売及び
CD番号
AUDIOPHILE(APL 101.542)
TAHRA(TAH 401-402)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクはベートーヴェンやマーラーといった有名な作曲家の作品も録音を残していますが、そういう有名な作曲家以外の他にほとんど録音が見当たらないようなマイナーな作曲家の曲も少なからず録音を残しています。
 そういう作曲家はたいていオランダの現代作曲家(当時としては)である場合が多いのですが、このピアノ協奏曲を書いたマックス・トラップ(1887〜1971)は、現代作曲家ではあるのですが、オランダ人ではなくドイツの作曲家です。
 さらに、マイナー作曲家の中でも筆頭の地位を争えるほどほとんど知られていません。
 いや、正確には『現代では』知られていないと言った方が良いのかもしれません。
 この演奏が録音された1930年代は結構人気作曲家で、メンゲルベルクの他にもフルトヴェングラーやワルターやアーベントロートといった当代の人気指揮者も取り上げていたらしいのですが、栄枯盛衰は世の常と申しましょうか、現代では見事と言ってよいほど綺麗さっぱり忘れ去られてしまいました。
 わたしは、よく知らない作曲家等の人物を調べる時には、音楽之友社の『新音楽辞典(人名)』か三省堂の『クラシック音楽作品名辞典』を利用しているのですが、そのどちらにも載っていません。
 それならば最後の手段とばかりにインターネットでも調べてみたのですが、これがまた日本語では全然引っかかりません。外国のサイトではさすがに何件かヒットするのですが、残念ながらドイツ語で、わたしの方がついていけません。
 それにしても、少なくとも1930年代はそれなりに持てはやされていた筈なのに、そんなに急に忘れ去られるというのも不思議です。
 完全に当てずっぽうですが、『1930年代まで』という点から考えると、もしかしたらナチス絡みなのかもしれません。
 ただ、聴いていて不満に感じる点もたしかにあります。
 聴いた事があるのがピアノ協奏曲だけなので、この曲に限っての話ですが、激しい部分あり、叙情的な部分あり、とバラエティに富んでいるものの、今一つ統一感がありません。
 歌うようなメロディーラインが出てくるとかと思えば、印象派風になったり、はたまた現代音楽風の十二音的な動きになったりするのですが、そのスパンが中途半端に短いのです。
 このスパンが長くてメロディー部分がある程度続くようであれば、その世界を堪能できますし、思いっきり短ければ短いで、次々と移り変わる様子が万華鏡のように印象的なのですが、ある程度続いたかと思うと違う要素に入ってしまうため、どうも印象に残らないのです。
 また、これはわたしの好みによるものでしょうが、メロディーにしてもどうもそっけないように感じました。
 ゆったりとした叙情的な部分でもどこか冷たいのです。
 なんだかちょっと突き放されたような馴染めなさがあります。
 さらに、現代音楽風の不協和音がぶつかり合う所なんかは、もっと徹底的にやって欲しいのに、協和音の響きが随所に残っていて、どうもどっちつかずといった印象を受けます。
 ただ、その一方で、部分で見れば面白かった部分もいろいろありました。
 最も気に入ったのは激しい動きのある部分です。
 この部分は、全てアクセントといった感じで、アタックが強く攻撃的です。
 ソロのピアノも、一音一音を叩きつけるように弾いていて、ほとんど打楽器のような勢いです。
 このソロを弾いているのはギーゼキングなのですが、この部分だけはメロディーよりもリズムに重点を置いた弾き方で、わたしは今までにこんなにピアノが壊れそうな叩き方をするギーゼキングを聴いた事が無かったので、驚いてしまいました。
 オーケストラの方も、ティンパニーを強く叩かせ響きを引き締めるとともに、メロディー演奏している楽器も音を短く切り、ガッチリと硬い音で、力強さがあります。
 もちろん、逆に叙情的な部分では、メロディーにたっぷりとポルタメントをかけて柔らかく弾いているところが、まあ、メンゲルベルクですね(笑)

 余談になりますが、一つ特筆しておきたいのは、この演奏というか録音は、おそらくメンゲルベルクで最も古いライブ録音です。(おそらくというのは、何点か録音年代が不明なものがあるため)
 しかし、音質の方は概ね良好です。
 たしかに、一部音が途切れたり、細かいニュアンスはほとんど聞き取ることができませんが、それでも音は割れていませんし、年代を考えるとまあ良い方と言えるのではないかと思います。(2004/1/17)