M.ラヴェル スペイン狂詩曲

指揮エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1946年9月10日
カップリングフランク プシュケ 他
発売AUDIOPHILE
CD番号APL 101.563


このCDを聴いた感想です。


 ほの暗い雰囲気の中にも情熱のこもった、なかなか色気のある演奏です。
 響きはメンゲルベルク時代に近く、重くドロッと濃いもので、ラテン的な明るさはあまりなく、色彩も少しくすんでいます。カラッとした華やかさとは正反対で、暗く沈んでいるのですが、火山の溶岩のように、底には熱い情熱が煮えたぎっています。
 その情熱は時に吹き上がり、表面に表れて来ます。
 メロディーをテンポまで変えてたっぷり歌わせたりと、着崩して誘って見せているかのような色気のある表情付けがそこかしこに見られます。
 ベートーヴェンやブラームスなどのドイツ物を演奏するときの、折り目正しくスッキリとしたアプローチとはまるで正反対です。
 ヴァン・ベイヌムの演奏というと、そういう背筋を伸ばしたイメージがあっただけに、このスペイン狂詩曲を聴いた時には驚きました。とてもヴァン・ベイヌムの演奏とは信じられなかったほどです。
 たしかに、途中でテンポを大きく動かしていても、それをそのまま引きずって引き伸ばした麺みたいにテンポが際限なく伸びてしまったりはせず、全体としてはベースとなるテンポはしっかりとしていて、それを保っている点はヴァン・ベイヌムの見通しの良さでしょう。テンポがぐらつかない分、途中でメロディーに合わせていろいろテンポを動かしているにもかかわらず、きちんとまとまっていて安定している印象を受けます。
 しかし、ベートーヴェンなどの時とは異なり、メロディーの持つ情熱と雰囲気を非常に重視しています。全体のフォルムを保つための力は最低限しか使わず、他の力を、すべてメロディーの色気に注ぎ込んでいます。
 一つ一つの音も微妙に強弱を変えて歌いこみ、次の音に移る時にも流れるように滑らかに移らせるなど、非常に丁寧に音を扱っています。
 陽気な明るさや派手さはありませんが、メロディーに込めた情熱や、暗さの中に渦巻き湧き上がる熱さなど、雰囲気が感じられる演奏です。

 ヴァン・ベイヌムのラヴェルの演奏は、この他には「ダフニスとクローエ」の第2組曲と他小品2点ぐらいしかありません。そのためヴァン・ベイヌムのラヴェルの演奏はほとんど聴いたことが無かったのですが、まさかこれほどまでに雰囲気を重視した演奏とは思ってもみませんでした。
 録音状態は、1946年という戦後すぐの時代ですから、それほど良くありません。
 一応、雑音や音割れは、無い……とまではいかないにしても、気にするほどではありませんでしたが、音の分離が良くなく、細かい動きまでは詳しく聞き取れない点がちょっと残念です。(2006/5/19)


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