M.ラヴェル スペイン狂詩曲

指揮シャルル・ミュンシュ
演奏パリ管弦楽団
録音1968年9月21・23・24日、10月3日
カップリングラヴェル ボレロ 他
発売EMI
CD番号CDC 7 47356 2


このCDを聴いた感想です。


 パリ管(パリ音楽院管)のラヴェルの演奏といえば、パリ管に改組される直前、まだパリ音楽院管の頃のクリュイタンスとの録音の評判が高く、それに較べるとパリ管になってからのミュンシュとの録音はフランス色が薄くなったとして今一つ受けがあまりよくないようです。もちろんミュンシュの演奏も評価はそれなりに高いのですが、フランスの最も代表的なオーケストラの改組される前と後ということからどうしても比較されがちで、その二つを較べると、クリュイタンス盤の評判が非常に高いだけにどうしても割を食ってしまうのです。
 わたしもクリュイタンス盤も嫌いではありませんし、むしろ好きな方なのですが、ミュンシュ盤にはクリュイタンス盤とはまた違う魅力を感じました。
 クリュイタンス盤がフランスのローカル色を濃く残した原色系の音色で、響きもスペイン狂詩曲という題名そのままにスペインの香が強く立ちこめ、全体的にベタッとしているのに対して、ミュンシュ盤はそれが薄く抑えられています。音色も淡色系の軽めの音で、響きもサラサラとして透明感がありそこにかすかにスペインの香が漂っています。地元密着のクリュイタンスに対して、都会型のミュンシュといったところでしょうか。
 各楽器の音色、特に管楽器の音色はクリュイタンス盤の方が個性がはっきりと出ていて、おそらくよりフランスの伝統に近いのはこちらでしょう。それに較べてミュンシュ盤は、フランスの伝統を残しながらもだいぶローカル色が薄れています。歌い方もミュンシュ盤の方はクリュイタンス盤に較べてだいぶサラッとしていますが、軽くつけた表情が絶妙で、しゃれた感じがします。
 表情の濃さやスペインらしいむせるほどの熱気という点ではクリュイタンス盤に負けていますが、透明な淡い響きに少し抑制を効かせた歌い方がいかにもフランスらしくしゃれていて、そこがミュンシュ盤の好きなところなのです。

 クリュイタンス盤とミュンシュ盤を較べていて、一つ面白い点に気がつきました。
 それは演奏時間の違いで、第1曲<夜への前奏曲>は、クリュイタンス盤の3分58秒に対して、ミュンシュ盤は4分56秒と、一分近くミュンシュ盤の方が長いのです。しかし、クリュイタンスの方が表情付けが濃く、ミュンシュ盤は薄いためでしょうか、聴いているとそこまで演奏時間に差があるようには聞こえませんでした。逆に、ジャケットに掲載されている演奏時間を見て初めてそんなに差があると知ったぐらいです。4〜5分程度の曲で一分の違いといえばかなり大きいはずなのですが、意外と気がつかないものだと、ちょっと驚きました。

 この演奏が録音されたのは1968年の9月末から10月頭にかけてですが、ミュンシュが亡くなるのがその年の11月6日、つまり亡くなるほぼ一ヶ月前でおそらく最後の録音でしょう。演奏旅行の途中での急逝ですから病に臥せっていたわけではありませんが、とても亡くなる直前とは思えないぐらい演奏は安定しています。
 ちなみに、ミュンシュのスペイン狂詩曲の録音は、このパリ管とのもの以外に、1956年にボストン響とものがあります。わたしはまだ聴いたことがありませんが、近いうちに手に入れたいものです。(2005/5/7)


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