M.ラヴェル ピアノ協奏曲 ト長調

指揮シャルル・ミュンシュ
独奏ピアノ:ニコール・アンリオ=シュヴァイツァー
演奏パリ音楽院管弦楽団
録音1949年5月31日
カップリングフランク 交響曲 他
発売ポリグラム(LONDON)
CD番号POCL-4603(460 929-2)


このCDを聴いた感想です。


 CDの解説や名曲解説集のような固い本に書かれる事はまずありませんが、よく知られた話に、この曲の第3楽章が、あの怪獣映画の「ゴジラ」の有名なテーマに非常に似ているという説があります。
 で、実際に聴いた感想としては……

 おおっ! これは確かによく似ていますね。

 実は、わたしはこの曲を初めて聴いた時は、まだそういう話を知りませんでした。
 そのため第3楽章に入ってから、急に「ゴジラ」が聞こえて来た時には、そこでそんなメロディーが聞こえてくるのが信じられなくて、一瞬、耳を疑ったぐらいです。
 もともとメロディーからして、コピー&ペーストしたみたいにそっくりで、わずかに一部が異なるぐらいしか差が無い上に、なによりも雰囲気がそっくりなのです。
 力強い中に、何か得体の知れない事態が起きそうな予感による不安感と緊張感があり、しかもそれが次第に、そして着実に強まって行きます。
 わたしの頭の中では既に、東京湾とそこからゆっくりと不気味な姿を現すゴジラの巨体が完璧に再現されています(笑)
 もっとも、第3楽章もゴジラ一本槍ではなく、全く違うメロディーもいろいろと登場します。
 ただ、それらのメロディーは動きが速く、さらにメロディー同士が絡み合ったりと複雑に入り組んでいます。
 その中で、単純な「ゴジラ」のテーマが登場すると、単純な分どうしても注意がそちらに向いてしまい、いつ登場してもかなりの存在感があります。
 そのため、実際はいろいろな要素があるにもかかわらず、今もって頭の中では「第3楽章は『ゴジラ』の楽章」という印象ばかり残っています。

 一方、第1楽章と第2楽章は、さすがにゴジラの影も形もありません。
 しかし、これはこれで変わった音楽です。
 緩徐楽章である第2楽章は、ゆったりとして穏やかで、幻想的な雰囲気を醸し出しています……初めの内は。
 前半のピアノが独奏で弾いている時は、そういう調和に満ちた世界なのですが、途中で他の楽器が加わって来る辺りからだんだん音楽がねじれて来ます。
 穏やかで調和の取れた世界はまだ続いているものの、不協的な和音やメロディーが次第に重なってきて、安らかな気持ちがどんどん不安な気持ちに傾いていきます。
 ただ、不安感が煽られてくるといっても、音楽は激しくなるわけではなく、最初から最後までゆったりとしたところは変わらないため、静かにどこからともなく不安が忍び寄ってくるような気分を表しているかのようです。
 第1楽章になると、さらに過激です。
 冒頭からしていきなり鞭の一発から始まりますし、スペイン狂詩曲の「祭日」を思わせるようなラテン的な華やか雰囲気と、ガーシュウィンの「サマータイム」を思わせるような物憂いちょっとだらけた雰囲気とが交互に現れ、時に入り混じります。
 CDに付属していた解説によると、ちゃんとしたソナタ形式らしいのですが、形式の美しさはあまり実感できませんでした。
 むしろ、次に何が出てくるのか予想できなくて意表つかれる楽しさを感じました。
 もし、解説に「自由形式」と書かれていても「さもありなん」ときっと納得したと思います(笑)
 他の楽章にも当てはまることなのですが、特にこの楽章は、一つ一つのメロディーがどうこうというより、その場その場での雰囲気やその変化に魅力を感じましたし、印象にも残りました。まあ、楽章の最後が、急に崩れ落ちるように急降下して行ったのには少し驚きましたが。

 演奏の方は、やはりパリ音楽院らしく、管楽器の音色が堪能できます。
 その特徴が現れているのは当然第2楽章で、楽器のソロが出てくるたび、独特の鼻にかかったような音色と、その音色を生かした表情豊かな歌わせ方に、つい浸って聴いてしまいました。
 ピアノソロのシュヴァイツァーは、危なげなく安定感があります。それにタッチが柔らかく、澄んだ音と相まって、清らかな雰囲気があります。
 個人的には、もう少しアクが強くてもいいかなとも思うのですが、この美しい音はそんな不満を十分に補ってくれます。(2004/2/7)


サイトのTopへ戻る