M.ラヴェル バレエ音楽「ダフニスとクローエ」より第2組曲

指揮ジャン・マルティノン
演奏シカゴ交響楽団
録音1964年11月28日
カップリングビゼー 交響曲 他
発売BMGビクター(RCA)
CD番号BVCC-8893/4(74321-33045-2)


このCDを聴いた感想です。


 シカゴ響の機能性とマルティノンのセンスがうまく融合した演奏です。
 どこをとっても、もやもやとしていたり曖昧だったりする部分がなく、細かい動きまで全てが明確になっています。
 前任者のライナー時代と同じように、どんな細かい音符でもごまかしなど一切無く、ピタリと揃っています。
 例えば、冒頭などで、木管などがウネウネと細かい音符を演奏して、その上を弦楽器などがメロディーをゆったりと大きく演奏する組み合わせがあります。他の演奏では、メロディーをよく歌う方が優先され、ウネウネトした動きは、どちらかというとモワモワとした雰囲気作りとしてサラッと流されがちです。むしろ、夜明けの薄っすらと霞がかった幻想的な感じを出すために、わざと少しいい加減気味にやっているように思える節もあります。
 しかし、この演奏ではそういうところまで、一つ一つの音をはっきりと区別してきっちりと楽譜どおり演奏しています。
 そのため、朝もやを全て取っ払ってしまったみたいなもので、全てが日光の下にさらされ、正直言って幻想的な雰囲気はほとんどありません。
 しかし、幻想的ではないからといって、無色透明の機械的な演奏というわけではないのです。
「夜明け」からはやはり「夜明け」の雰囲気がします。
 それは、ぼんやりとした幻想的な夜明けではなく、もっと明確で力強い、地平線の彼方から輝く太陽が確実に姿を現していくような、ゆったりとしていながら、スキッと澄み切ったものです。
 このあたりはやはりマルティノンの力なのでしょう。
 オーケストラの精度の高さは生かしながら、テンポを微妙な伸び縮みさせ、さらにメロディーをサラッと軽めながらポイントポイントで力を入れて歌わせることで、音楽を硬く杓子定規なものから表情豊かな生き生きとしたものへ変えています。
 こういうラヴェルのような音楽を柔らかくサラッと歌わせることは、マルティノンの最も得意とするところでしょうし、そうなると今度はシカゴ響の技術力の高さが、それをしっかりと支えさらに効果的に表現しています。
 長所が相手の足りない部分を補い長所をさらに伸ばしていくあたり、相乗効果といっても良いでしょう。
 たしかに、単純にフランス物を演奏するセンスだけ見れば、フランスのオーケストラの方が上かもしれません。
 しかし、技術力についてはもう一つ頼りないフランスオーケストラとは、安定感が大きく違います。
 単にアンサンブルが揃っているというだけでなく、マルティノンがそのセンスを遺憾なく発揮できるように技術面から支え、さらにシカゴ響ならではのパワーがあります。
 最後の「全員の踊り」では、軽快なテンポの良さと、躍動感のある生き生きとしたリズムにフランス物らしいセンスの良さを感じ、そこにシカゴ響の引き締まった響きによるキレとパワーが加わっています。
 ただ揃っているだけでも、ただ軽くテンポが良いだけでもない、その両方を兼ね備えた演奏というのは、他ではなかなか無いのではないかと思います。(2006/7/22)


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