M.ラヴェル ボレロ

指揮ウィリアム・スタインバーグ
演奏ピッツバーグ交響楽団
録音1958年10月29日
カップリングP.I.チャイコフスキー イタリア奇想曲 他
発売EMI
CD番号CDM 7243 5 65204 2 4


このCDを聴いた感想です。


 イロモノ街道を全速力で突っ走った演奏です。
 みなさんもご存知の通りボレロという曲はたった二つのメロディーをいろいろな楽器がソロで交代に演奏する曲です。
 当然印象もソロがどう演奏するかによって大きく変わるのですが、この演奏、ソロが大げさなぐらい歌いまくっています。
 ボレロでソロが良く歌っている演奏というとクリュイタンスのパリ音楽院管が有名ですが、クリュイタンスの演奏は歌っているといってもそこはフランスらしくあくまでも粋な雰囲気を大事にして大げさな歌い方にはしていないのに対して、スタインバーグの演奏はそういう粋とかセンスなんてものともせず行き着くところまで行き着いています。
 まずは音色。
 ピッツバーグ響はアメリカのオーケストラの中でもスタインバーグの指導によりドイツ風の重厚な響きで知られるだけあって各奏者の音も縦に伸びる音で厚みがあるのですが、それを無理やり平たく押し潰したような音で、なんだか演歌や浪曲の喉をわざと潰した歌い方みたいに濁らせることで逆に表現力が高くなっています。
 その上、歌い方も普通に細かい表情をつけるだけでなく、よりドラマティックに盛り上げる方向を目指して歌われています。
 ピアノからフォルテまでのダイナミクスの幅が広いのはもちろんのこと、ソロが入ってくる時はピアノなのにそこから大きく膨らませたりと、持って行き方もわざと不自然にしたんじゃないかと思えるぐらい強引にフォルテまで引っ張りあげたり、そこから急にピアノに落としたりと、差が強調されています。
 どの楽器もほとんど同じ傾向ですが、特に強烈なのがサックスのソロです。
 そもそもサックスは表現の幅が広い楽器なのですが、この演奏ではその利点を最大限に利用し、落差の大きいフォルテとピアノや大きなビブラートに加えて悲鳴のように締め付けた細い高音から霧笛並みの太っとい低音まで使い分けて、もうこれでもかこれでもかと徹底して大げさに歌っています。
 わたしもボレロはそれほど数多くの演奏を聞いたわけではありませんが、少なくとも今まで聞いた中ではぶっちぎりに面白い演奏です。
 スタインバーグとピッツバーグ響って、ベートーヴェンの交響曲第7番第8番といった締まった演奏するかと思えば、このボレロのような明後日の方向目指して突っ走った演奏があったりするので目が離せません。
 実はこのCD、収録されている全6曲のうち4曲は既に持っている別のCDにも入っていたため、未聴の2曲のためにわざわざ買うのももったいないかなと思ってちょっと躊躇し、結局中古で安いからまあいいかなぐらいの気持ちで買ったのですが、大当たりでした。
 個人的には、ボレロ一曲で十分元がとれた気分です(笑)(2004/6/12)


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