M.ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」

ラヴェル編曲

指揮セルジュ・ボード
演奏パリ管弦楽団
録音1969年
カップリングムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ピアノ版)
発売EMI
CD番号7243 5 73752 2 1


このCDを聴いた感想です。


 パリ音楽院管がパリ管に改組されて、技術は上がったけれどローカル色は大分薄れたしまったなどと言われました。しかし、この演奏は、パリ管に変わってからまだ3年目の録音で、未だそこかしこにパリ音楽院時代から続くフランス風の音色が残っています。
 中でも聴いた瞬間に、ああフランスだなと感じるのが「古城」です。
 冒頭のファゴットの音色が、聴き慣れたファゴットの音色ではなく、大きく異なるバソンの音色なのです。ファゴットの音の下の響きをスパッとカットし、逆に鼻にかけて上に膨らませたような響きで、ファゴットだと落ち着いた感じなのに対して、フワフワと漂うような感じがして、主旋律のサックスが出てくる前から、哀愁を目いっぱい醸し出しています。
 バソンの音色は、よくサックスに近いと言われ、わたしも他の曲でバソンの音色を聞くと、たしかにサックスっぽいと思います。ただ、この曲のようにたまたまバソンとサックスが同時出てくるのを聴くと、さすがにかなり異なっているのがわかります。もちろん奏者にもよるのでしょうが、サックスの方がより下に響きます。それではファゴットとサックスが同じではないかといえば、さすがに、この二つは音色が大きく違うので、聴いていて近く感じることはありません。サックスの方が輪郭が鮮やかで、響きももっと横に広がります。
 ファゴットの話はさておき、この「古城」でのバソンとサックスのアンサンブルというのは、なかなか強力です。物憂い雰囲気を大いに感じさせながらも、重く沈みこむことなく、漂うように動くことで、より表情を豊かに感じます。さらに、バソンとサックスだけでなく、イングリッシュ・ホルンなどの他の木管楽器や弦楽器も薄い響きで加わるため、全体としてもすごく不安定な感じがして、なんというか安定した地盤を持たないロマの人々を思い起こさせるような、不安感や物悲しさが深く染み入ってきます。
「古城」以外の曲も、「古城」ほど個々の楽器の音色が強く出ているわけではありませんが、全体の響きとしてはやはりフランスらしさが感じられます。
 他の演奏に較べて響きが薄く、どっしりとした安定感は無いものの、逆に低音の動きが良く、特に表情の豊かさは、他の演奏を大きく引き離しています。
 この表情の豊かさは、低音楽器だけでなく、高音楽器も同様で、特に管楽器辺りは、冒頭のプロムナードのトランペットを聴けばすぐわかります。パリッとした音色で、完璧にソロ楽器のように、大きく抑揚をつけて歌いこんでいます。
 まあ、そもそも全体的に、伴奏を含めて全ての楽器がソロ楽器の集合体みたいなものです。全体で一つの響きといった統一感には少し欠けていて、部分的にはアンサンブルがちょっと合ってないんじゃないかと思える場所もあったりしました。とはいえ、ソロ楽器の意識で演奏しているだけあって、個々の奏者の技術はかなり高いようです。細かい部分まできっちりと表現していて、かなり聴き応えがありました。
 おそらく、クリュイタンスなどと並んで、フランス的な展覧会の絵の代表だと思います。(2011/4/2)


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