M.ムソルグスキー 『リャドの夢』〜「ソローチンツィの定期市」より〜

(交響詩「はげ山の一夜」)

指揮ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
出演バリトン:デイヴィッド・ウィルソン・ジョンソン
演奏BBC交響楽団
BBC交響合唱団
録音1981年7月27日
カップリンググリンカ 「ルスランとリュドミュラ」序曲 他
発売CARLTON(BBC classics)
CD番号15656 91392


このCDを聴いた感想です。


 この「はげ山の一夜」独唱及び合唱付き版は、ソニーより発売されたアバドの演奏がよく知られています。またこの他に以前感想を書いたポリャンスキーの演奏もあります。
 しかし、その二つの録音はともに1990年代半ば。このロジェストヴェンスキーの演奏は、それよりもさらに10年以上も前、1980年代頭に録音されたものです。この曲の録音(といってもスタジオではなくライブですが)のハシリではないでしょうか。
 演奏しているのは、当時ロジェストヴェンスキーが短期間ながら首席指揮者を務めていたBBC交響楽団。他の二つの演奏の団体と比べると、正直言って、ベルリン・フィルほどの圧倒的なパワーとテクニックはありませんし、大人しくなったとはいえソヴィエトのオーケストラの末裔であるシンフォニック・カペラ(そういえばこのオーケストラはもともとはロジェストヴェンスキーのオケでしたね)の押しの強さにも及びません。このBBC響の演奏も、別にこじんまりとして大人しいというほどではないのですが、他の二つよりは表現が穏やかで手堅くまとまっているという印象を受けます。唯一のライブなのにライブらしい勢いがあまり表には出ていなくて、録音が不利な分、ライブなのがむしろデメリットになっています。
 では、この演奏の感想を書こうと思ったかというと、それは歌詞の面白さにあります。
 原曲ではロシア語で、もちろんアバドもポリャンスキーもロシア語で歌わせています。
 しかし、この演奏は歌詞が英語なのです。おそらくイギリスでの演奏だからでしょう。
 いや、これが感心するぐらい雰囲気に合ってないのです。
 初めの方のいわゆる悪魔語と称する部分は、訳しようが無くそのままですから、得体の知れない不気味な雰囲気で、恐怖感がしだいに高まってきます。
 恐怖感が最高潮に達したところで、チェルノボグがバリトンの独唱で登場するわけです。
 この独唱は意味のある歌詞で、これが原曲通りロシア語であれば、聞いてすぐには意味がわからないこともあって、語感も結構オドロオドロしくチェルノボグの雰囲気によく合っています。
 ところがこれを英語でやられると、なまじ聞き慣れた単語が多いだけに、妙に身近で親しみを感じてしまうのです。
 なんだか、悪魔を呼び出す儀式に成功したと思ったら、出てきたのは悪魔の仮装をした近所のおっちゃんだったというほとんどコントのノリですね。一気に脱力します。
 もちろん歌っている方はまじめに歌っているのですが、まじめに歌えば歌うほど原曲とのギャップでよけい笑えてしまうのがますます悲劇的というか……まあどちらかというと喜劇に近いですね。
 ただ、その分、印象的ではありました。
 もしこれが、原曲通りロシア語で歌っていたら、単なる大人しい演奏として記憶の彼方に消えてしまいもう一度聴こうとはあまり思わなかったでしょうが、英語で歌っているからこそ何度でも繰り返し聴きたいと思ったのですから。
 まあ、もちろんロジェストヴェンスキーはそんなつもりはなかったでしょう。でも個人的にはそこに大満足です。(2005/12/10)


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