M.ムソルグスキー 交響詩「展覧会の絵」

ストコフスキー編曲版

指揮レオポルド・ストコフスキー
演奏ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
録音1969年6月15日
カップリングG.グリンカ 「カマリンスカヤ」 他
発売IMG(BBC Legends)
CD番号BBCL 4069-2


このCDを聴いた感想です。


『はげ山の一夜』というと、たいていはリムスキー=コルサコフの編曲したものがよく演奏されますが(最近は原典版も増えてきました)、これは、リムスキー=コルサコフの編曲をさらにストコフスキーが独自に編曲した演奏です。
 リムスキー=コルサコフの編曲は、原典版に較べ、おどろおどろしさという点では一歩劣るものの、その分モノクロに近かった雰囲気を華やかなものにガラッと変えていますが、ストコフスキーの編曲はその彩りをさらに極彩色にまで推し進めています。
 単独で聞けばリムスキー=コルサコフ版も十分に派手なはずなんですが、ストコフスキー版の毒々しいまでの彩りの前では、古典派の交響曲かと思うぐらいスッキリとした淡い色合いの曲に聞こえます。
 なにしろ、ストコフスキー版のギラギラ感は半端ではありません。
 打楽器は大幅に増えていますし、管楽器は割れて下品になる寸前の音でそこら中を蹂躙し、弦楽器なんか、わざと悲鳴のような超高音を出して、それをさらにポルタメントで上がり下がりさせて、不気味な雰囲気をさらに強調しています。
 終盤のチャイムがカーン、カーンと打ち鳴らされる直前の、悪霊たちの宴が完全に破綻するところなんかは、サスペンデッドシンバル(シンバルを吊り下げたもの。ティンパニー等のようにバチで叩く)まで駆使して強烈に崩壊する様を描き出しています。まさしく(悪霊たちにとっての)世界が終わるのが実感できるような大迫力です。
 さらに、同じメロディーが何度も続けて演奏される部分では、メロディーを演奏する楽器がほとんど毎回変わり、めまぐるしく雰囲気が動いていきます。しかもその変わり方は、前とのつながりを保ちながら少しずつ変化していくのではなく、木管群が演奏した直後に同じメロディーを低弦、その直後にまた同じメロディーを今度はトランペット、というように、もう完全に異なる雰囲気が次々と登場します。個人的には、こういう違う雰囲気同士を無理やりぶつけるあたりがいかにもストコフスキーらしいと思いますが。
 また、リムスキー=コルサコフ版がベースとはいえ、あちこちにカットや新たに付け加えた小節があるようです。演奏時間自体は10分弱と、そんなに変わりありませんが、なんだか一部抜けているような部分と、聞き覚えの無い音楽がありました。
 特に最後の方に新たに加わっていたホルンの四重奏(たぶん)は、ウェーバーの森の狩人達の合唱を思い起こさせるような爽やかさで、なんだか笑いがこみ上げてしまいました。いえ、たしかにここはもう平和な朝の場面ですから、爽やかなのが当り前なのですが、それまでのおどろおどろした雰囲気がいつも以上に強烈だったので、あまりのギャップに思わず。

 ストコフスキーの演奏は、その編曲を十二分に発揮させるだけでなく、さらにオーバーに効果をつけています。
 テンポの伸び縮み、急な変更はもちろんのこと、伸ばしている音の最後をクレッシェンドして吹き切ったりというのもしょっちゅうです。
「はげ山の一夜」のストーリーにふさわしく、決して上品にスッキリとまとめたりせず、とにかく派手に大げさに嫌らしさを思いっきり前面に出しています。
 変に芸術性を見せようとせず、これだけエンターテインメントに徹することができるのも、やはりストコフスキーだからこそではないかと思います。(2005/3/26)


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