M.ムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」

リムスキー=コルサコフ 編曲

指揮コリン・デイヴィス
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1979年11月
カップリングストラヴィンスキー バレエ音楽「火の鳥」
発売PHILIPS
CD番号434 731-2


このCDを聴いた感想です。


 端々まで注意が行き届いたとても丁寧な演奏です。
 一つの音一つのフレーズに至るまで、大事に演奏されています。
 曲の冒頭からして、ヴァイオリンが三連符でせわしなく動いて狂騒的な雰囲気を作り上げるはずが、三連符ごとに切り離されて、最初の音ごとに改めて弾き直しているため、狂騒的どころか非常に整然としていて、ほとんど堅苦しいぐらいです。
 冒頭の三連符からそれぐらい丁寧に演奏するぐらいですから、当然全体に関してもアンサンブルは非常に良く揃っています。
 例えば、低音によって初めてメロディーが登場する部分での伴奏の、8分音符でスタッカートの動きなどは、ヴァイオリンと木管楽器と大太鼓の音がピッタリ揃っていて、さらに、それがずっと同じ強さをを保っているため、まるで工場の機械でも見ているように思えてくるほどです。
 しかし、機械のように正確といっても金属的な冷たい無表情無感情ではなく、響きには木のような温かみがあり、メロディーもよく歌われています。
 なかでも、終盤の静かな部分に出てくるクラリネットとフルートのソロは、極端に走ることなく品の良さを保ちながら、しみじみと聴き入ってしまうほど情緒豊かです。
 さらに、特筆しておきたいのがバランスです。
 もちろんハーモニーのバランスは良いのですが、それだけではありません。
 どこかのパートが突出したりせず、どのパートも常に全体の中の一つとして過不足ない位置をキープしています。
 メロディーだからといって伴奏を置き去りにすることなく、伴奏と一体になることで、メロディーにより厚みが出ていますし、伴奏も、埋もれることなく、しかし決してメロディーの邪魔をしない絶妙な位置を保っています。
 このように、それぞれの楽器がちょうど良いバランスにあるため、全体としての響きが非常にまとまっているのです。
 この点は、数ある演奏の中でも模範的といっても良いのではないかと思います。
 ただ、この演奏は、丁寧に演奏してあるだけあって、ライブの演奏に代表されるような「勢い」はあまりありません。
 全体としての迫力はそれほど劣っているわけではないのですが、バランスが取れすぎているために、逆にどこか突出した、言い換えると「ぶち切れた(笑)」ところが無いのです。
 なにせ曲の内容自体が、『山に魑魅魍魎が集まり悪魔の王を呼び出して狂宴三昧』という猟奇的なものだけに、どうしても音楽の方もどこか破滅的で狂ったところがないといけないような気になるのですが、この演奏にはありません。
 しかも、全体的に温もりがあるため、猟奇的からはほど遠く、山で傍若無人のやりたい放題どころか『魑魅魍魎たちが、室内でコタツを囲んでミカンを食べながら茶飲み話』といったアットホームなイメージが浮かんでしまったぐらいで、恐怖感とは無縁の演奏です。
 まあ、逆に言えば、おどろおどろした雰囲気を割り切ったところに、この演奏ならではの個性と魅力があるわけです。(2003/12/6)


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