M.I.グリンカ 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

指揮ベルナルト・ハイティンク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1965年12月
カップリングスーザ 星条旗よ永遠なれ 他
「Dutch Masters Meesterstemmen Volume 41」より
発売PHILIPS
CD番号462 105-2


このCDを聴いた感想です。


 まさに楷書書きの演奏です。
 行書や草書のような流れるような流麗さやスピードに乗った勢いはありませんが、一文字ならぬ一音一音マス目に埋めたかのようにきっちりと演奏しています。
 テンポはむろん遅めですが、のんびりとは正反対で緊張感があります。同じようにきっちりとしていながらしかも緊張感の高い演奏にはムラヴィンスキーの演奏がありますが、テンポがまるで違うため、印象はかなり異なります。ムラヴィンスキーの方はそのとてつもないテンポの速さにより聴くものを圧倒する迫力を生み出していますが、ハイティンクの演奏にはそういったパワーで押し切った迫力はありません。スピードによって緊張感を高めるのではなく、細部まできっちり揃えてそれを積み重ねていくことで大きな建築物のようなしっかりと揺ぎ無い演奏にしているのです。勢いはなくてもがっちりと組み合わさった密度の高さはそれだけで迫力がありますし、さらにテンポが遅いことで、他の速いテンポの演奏では聞き取ることが難しい細部の揃っている様子まで虫眼鏡で見たようにくっきりと読み取れてます。その隅の隅まできっちりと整っているところは、まるでハイティンクが一挙手一投足に至るまでコントロールしているみたいで、ほとんど息が詰まるレベルまで達しています。
 ただ、8分音符などの細かい音符はかなり短く、フレーズの最後もスパッと切っている事もあって、遅いテンポで密度の濃い演奏のわりには重くは聞こえません。響きも押し包むようなものではなく、風通しは良く、軽快とまではいかないまでもスピード感は意外とあります。また、細部まできっちりと揃えているということは、細部まできちんと表情付けがされていることであり、表情は豊かですし、それも仮面のような人工的に作った不自然な表情ではなく、自然で生き生きとしています。
 たしかに、最初に聴いた時のインパクトという点では、ムラヴィンスキーなどのテンポの速さで圧倒する演奏のようにはいきませんが、あえて遅いテンポで細かい部分まで聞かせることで、じっくり聴けば聴くほどその仕事っぷりに圧倒されてくる演奏です。(2007/5/5)


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