M.ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
独奏ヴァイオリン:グィラ・ブスタボ
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年10月27日
カップリングシューベルト アルペジョーネ・ソナタ 他
Willem Mengelberg Public Performances, 1938-1944
発売Music&Arts
CD番号CD-780


このCDを聴いた感想です。


 ソリストのブスタボは、女性のヴァイオリニストらしいのですが、何の情報も無しにこの演奏を聞いたら、とても女性のヴァイオリニストの演奏とは思わないでしょう。


 凄まじい音のキレ味!

 激しいパッション!

 そして……いい加減なテンポ!(笑)


 まあ、最後のテンポはともかくとして、キレ味とパッションに関しては、ヌヴーとかいますから、女流だからといってそう珍しいことでは無いのかもしれません。
 また、テンポに関しては、半分はバックを指揮しているメンゲルベルクの方にも責任があります。
 メンゲルベルクは、いつものごとくテンポを極端に動かしていますので、弾き慣れているオーケストラのメンバーはともかく、ブスタボにとってみれば、「えっ!? どこまで音を引き伸ばすのよー ちょ、ちょっと、そんなところで急にテンポを遅くしないでよ。こっちにだってフレージングの問題があるんだから! あーっ! あーっ! 弓が足りない! 弓が足りなくなるーーーーっっ!!」という気分かもしれません。(すみません……勝手に想像して作っちゃいました)
 ただ、ブスタボ自身もかなりテンポを動かす方で、カデンツァが多い第1楽章なんかは、ソロの部分で自由気ままと言って良いぐらい頻繁にテンポを変更しています。
 このブスタボのテンポの動かし方と、メンゲルベルクのテンポの動かし方の方向性が、またちょっと異なっているため、第1楽章なんかは、一体どっちへ進みたいのか、聞いていてよくわからなくなってくるほどです。
 幸い、ソロもバックも異常にテンションが高いので救われていますが、これで並みのテンションの演奏だったら、危うく、ろくでもない演奏になるところでした。
 これが第3楽章になると、テンポがキッチリ決まっているため、ソリストとバックのオーケストラの息も合ってきて、緊張感と迫力のある見事な演奏になっています。
 とりわけ音のスピードには目を見張るものがあります。
 このスピード感というのは、スマートで綺麗なイメージではありません。
 もっと熱く激しいもので、ピッチャーの投げるボールに例えると、速球というより剛球という感じです。

 ブスタボの演奏にはもう一つ特徴があります。
 先ほど、テンポをメンゲルベルク同様かなり動かしていると書きましたが、テンポを大きく動かしている割にはメロディーをむやみに歌わせたりはしていません。
 もちろん、これは素っ気無く演奏しているという意味ではありません。
 過剰な演出を避けているのです。
 メンゲルベルクの方が「そこまでやるか!」といいたくなるぐらい思いっきりポルタメントやビブラート等の演出をつけていますので、これでソリストまで演出過剰だったら、あまりにもくど過ぎてとても聞いていられないような演奏になりかねません。
 くどめのバックとスッキリしたソロとが組み合わさることにより、バランスがとれた演奏になっているのです。
 でも、これって普通は、ソリストの方がいろいろ飾り付けて、バックの方は目立たないようにあっさり演奏するものですよね。
 まあこの演奏も、別に、ソリストよりバックの方が目立っているわけではありませんが、ちょっと変わっているのは確かだと思います。

 録音は、1940年代のライブ録音ということを考えれば、並みの水準でしょう。
 ただ、ライブだけあって、一部、激しい雑音が入っていたり、音量レベルが急に変わってしまうところがあるのがちょっと難ですが。

 この演奏は、当CDの他に、昨年(2000年)発売された10枚組のHISTORYシリーズと、最近(2001年5月)発売された10枚組+1DVDのシリーズと、はるか昔キングから発売された「陶酔! メンゲルベルク不滅のライブ」に収録されています。
 これら4種のCDのなかで、キングの国内盤と10枚組+1DVDのシリーズは未聴なのでわからないのですが、HISTORYシリーズの演奏と、当CDの演奏とでは、ざっと聴いた限りでは、ほとんど差は無いように感じました。どちらも冒頭のティンパニーのトリルが欠落しているという点では全く同じですし……(2001/6/8)


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