M.A.バラキレフ 3つのロシアの主題による序曲第1番

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏ソヴィエト国立交響楽団
録音1978年
カップリングバラキレフ 交響曲第1番 他
発売BMG(Melodiya)
CD番号74321 49608 2


このCDを聴いた感想です。


 バラキレフの代表曲というと、まあ「イスメライ」辺りでしょう。といってもこの「イスメライ」にしても、名前は知っていても実際に聴いたことがある人はロシア音楽のファン以外ではどれだけいるでしょうか。ましてや、今回取り上げる「3つのロシアの主題による序曲第1番」なんて、全く聞いたことが無い人も多いと思います。
 ちなみに、第1番というからには第2番もあり、第2番の方は後に改作されて交響詩「ルーシ」という曲になっています。
 私も、初めて聴く前には、「いったいどんな曲だろうか、馴染みやすい曲ならいいのだけれど……」などと思っていましたが、実際に聴いてみると、「なーんだ」と拍子抜けしてしまいました。
 曲名のとおり、ロシアの民謡から取られた主題が3つ登場し、それが組み合わさって曲ができています。その3つの主題のうち、2つはよく知ったものだったのです。
 1つ目のやわらかくゆったりとした主題こそ初めて聞くものでしたが、2つ目の暗めで緊張感漂う主題は、チャイコフスキー交響曲第4番の終楽章の第2主題と同じです。どうでもいいのですが、このメロディーは、わたしの学生時代には『酔いどれじいちゃん○んだ〜 風〜呂で滑って○んだ〜』などとロクデモない替え歌がつけられていたのを思い出します。そして、3つ目の明るく伸び伸びとした主題は、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」の第4場の「乳母の踊り」で登場するメロディーと、ほぼ同じです。しかも、最初にメロディーが登場するのがオーボエのソロという点まで一致しているため、ますます同じに聞こえます。
 3つの主題のうち、2つまでがよく知ったメロディーなのですから、馴染みやすさという点では、なんの問題もありませんでした。むしろ交響曲第4番とペトルーシュカをミックスして聞いているような気すらしてきました。というか、この曲を聞いて、初めてその2つのメロディーがチャイコフスキーとストラヴィンスキーの全くのオリジナルではなく、ロシアの既存の民謡を下敷きにしたものだったと気が付いたぐらいです。
 演奏時間はトータルで8分程度ですから、もともとそう長い曲でもないのですが、聞いていて実際にかかっている時間よりもずっと短く感じられました。
 さて、演奏の方ですが、実はスヴェトラーノフにはこの曲の録音が2種類あります。
 一つが1978年にソヴィエト国立響と録音したもので、これが今回取り上げる演奏です。もう一つが、13年後の1991年にフィルハーモニア管弦楽団と録音したものです。
 後の録音の方が西側の録音で年代も新しいとあって録音がより鮮明で、イギリスのオーケストラらしくよくまとまっているのに対して、旧録音は、いかにもソヴィエト国立響らしく強くパワーのある演奏です。録音が悪いといっても1970年代ですから単独で聞いている分には全く気になりません。爆演系の演奏かというと、同じ曲でもデルヴォー/パリ音楽院管などの方がより爆演系に近く、変にデフォルメすることなくバランスは保たれています。それでも、力が入っていてエネルギーを感じさせるという点は、この演奏が一番だと思います。
 難しい動きなんかも、サラッと簡単に見せたりはしません。協奏曲のカデンツァを聴かせるみたいに全力で「どうだ!」とばかりに弾き上げています。たしかに難易度しては難しい部分を簡単に聞かせるほうが遥かに難易度が高いと思いますが、説得力はこちらの方が感じられました。
 そして、鳴らすところは、響きの美しさを半分切り捨てたぐらいの勢いでガツンと出る。まさに、ロシアのオーケストラらしく、スキッと爽快な演奏でした。(2008/12/6)


サイトのTopへ戻る