L.v.ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
独奏Vn:グィラ・ブスタボ
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1943年5月6日
発売及び
CD番号
ARCHIVE DOCUMENTS(ADCD.117)
キング(KICC 2060)
Virtuoso(70003)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクの指揮したベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は2種類あり、以前感想を書いた1940年のツィンマーマンとの録音と、今回取り上げる1943年のブスタボとの録音です。
 当時、ブスタボはまだ24歳の若き女性なのですが、このソロがまたえらく気合が入っているのです。
 音にスピードがあり、さらに音の一つ一つに力を込めて情熱的に演奏しています。
 太さはそれほどではないのですが、芯はしっかりしており目一杯弾き切っているため力強さも十分です。
 力強さという点では伴奏のメンゲルベルクも引けをとらず、さらにオーケストラの強みで響きも厚く幅があります。よくヴァイオリンが独奏の協奏曲の場合はピアノなどの大音量の出るソロ楽器の場合と異なり、ソロ・ヴァイオリンを消してしまわないよう、弦楽器の人数を減らしたりするのですが、おそらくこの演奏では普段と全く変わらない人数なのではないでしょうか。ブスタボのソロと同時に演奏する部分でも凸凹のある地面でも物ともしないブルドーザーのごとく遠慮会釈無く強大な響きで圧倒してきます。しかし、ブスタボはその分厚い響きに決して引けをとっていません。オーケストラだけ出てくる部分では「これだけオーケストラが力強かったらソロなんて全く聞こえないに違いない」と思えるのに、ソロの力強さは完全に張り合っていて、バックがいくら分厚かろうがその存在感はビクともしません。いやもうこの厚い響きを突き抜ける輝きには驚かされました。
 さらに音の移り変わりも硬くしっかりとしています。
 メンゲルベルクとの共演ということもあってか、音が変わる際に少しポルタメントをかけることもありますが、たとえポルタメントがかかっていても、音の変わり目をずいぶん明確に付けています。
 メロディーの歌い方自体は、それほど厳密に一拍一拍テンポを堅く守っているわけではなく、多少……どころか結構大きく伸び縮みを付けた崩した歌い方です。しかし音の移り変わりは、よくジプシー風の歌い方であるように、なし崩しに音が変わっていくのではなく、むしろきっちりと言って良いぐらいに、変わった音の頭を強調しています。テンポは伸び縮みしても音の変わり目がハッキリしているために、情熱的に弾いていても勢い任せでは無く、しっかりと地に足をつけている安定した弾き方であることがわかります。

 メンゲルベルクの伴奏は、先ほど書いた通り力強く分厚いものです。常に堂々としていて、これでソロが無かったらほとんど交響曲を演奏しているみたいなものでしょう。
 とはいえ交響曲ではないので、どうしてもソロとの合わせという部分が出てきますが、同じベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲にしても、ツィンマーマンとの演奏に較べて流れがより自然です。
 ソロのテンポの動かしようは、どちらの演奏もやりたい放題と言えるほど大きく伸び縮みさせているのですが、ツィンマーマンの時はソロと伴奏の呼吸が今一つ合わず、伴奏はソロに、ソロも伴奏に合わせるのに四苦八苦している様子が聴いているだけでもわかったものですが、ブスタボの方は伴奏もソロに合わせてテンポを伸び縮みさせていてもそれがスムーズで、無理なく乗っています。
 ただ録音はあまり良くなく、雑音が入っているだけでなく、音質が途中で急に変わってしまったり、とどめにレコードみたいに音が跳んでしまっている部分まであります。おそらく素にしたレコード盤に傷が入っていたのでしょう。まあ最後の音跳びは別にしても 録音状態が悪いのは、ライブですし、時代を考えると仕方ないところですね。(2005/7/23)


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