L.v.ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

指揮ハンス・ロスバウト
独奏Vn:ジネット・ヌヴー
演奏南西ドイツ放送交響楽団
録音1949年9月25日
カップリングベートーヴェン 交響曲第8番
発売hänssler
CD番号CD 93.033


このCDを聴いた感想です。


 まずはヌヴーに尽きるといったところでしょうか。
 相変わらずキレのある音です。
 しかも普通だったら悲鳴のような鋭く細い音になるような高音でもほとんど音が痩せません。
 悲鳴どころか高値安定とでも言うべき響きのある音で、ふらついたりせず安心して聞いていられるだけでなく、高い音でも余裕を持って歌い豊かな表情をつけています。
 そして何よりもその音色。
 決して19世紀の演奏家によくあった艶やかさとかそういった聴く者を惑わすような妖しい音色ではなありません。
 いかにも王道という健康的な音色にして、光り輝く明るさを伴っています。
 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は交響曲第5番等と違い健康的な明るさが似合う曲で、ヌヴーのヴァイオリンも曲に良くあっているのですが、あまりにもヌヴーの存在感が大きいため曲を聴き終えた後もヌヴーが演奏しているヴァイオリン協奏曲という印象しか残らず、『あ、そういえば今の曲ってベートーヴェンの曲だったな』と慌てて再認識したくらいです。

 一方、伴奏がロスバウト指揮の南西ドイツ放送響というのもなかなか期待と不安が持てるパートナーです。
 なにせ、ロスバウトといえば現代音楽演奏の第一人者で南西ドイツ放送響はその手兵です。現代音楽でのゴールデンコンビがほとんど古典派に近いベートーヴェンをどう演奏するのか、聴く前はこの点も楽しみにしていました。
 まあ、結果から言うと、想像したよりも遥かに正統的なドイツ風の演奏でした。
 個人的には後のギーレンのような歌うことを排した鋭い金属的で殺伐とした演奏を予想(期待?)していたのですが、前衛的なところはアタックやアクセントが硬く鋭いところにちょっと垣間見えるぐらいです。
 むしろどちらかというと丸く柔らかい音色で、全体の響きは暑苦しくない程度に軽めながら重心は低く安定していて、メロディーがよく歌われた真っ当な(?)伴奏です。
 そもそも考えてみれば、南西ドイツ放送響は南の方とはいえれっきとしたドイツのオーケストラなんですから、こういう演奏をしてもむしろ当然のことなのでしょう。

 最後に一つ特筆しておきたいのが録音です。
 1949年という戦後間もない時期とは思えないぐらい鮮明な音です。
 ましてやライブ録音という点を考えると驚異的といえるかもしれません。
 特に響きの奥行きの深さはブライトクランク(擬似ステレオ)並みで、 初めて聴いたときには、一瞬『あれ、この演奏ってステレオだったっけ?』と錯覚したほどです。(2004/5/22)


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