L.v.ベートーヴェン 交響曲第8番 ヘ長調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年4月18日
発売及び
CD番号
TELDEC(243 725-2)
日本フォノグラム(PHILIPS)(PHCP-3084〜97)
Music&Arts(CD-1005)
ALLEGRO(CDO 1021)
ARCHIPEL(ARPCD 0192)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクの全曲録音が残っている第8番の3種類の録音の中では2番目、1940年のライブ録音です。ベートーヴェンの交響曲全集としてPHILIPS(日本フォノグラム)からまとまって出ている1940年の4〜5月のチクルスの中からの一つです。
 録音が残っている3種類の中では、音のキレや勢いという点では他の2枚に較べると少し弱く、他の2枚ほどのインパクトはありませんが、代わりに前後の流れが良く、高い水準でまとまっています。
 例えば、1938年のスタジオ録音はさすがに当時としては録音が鮮明で楽器の分離が良く鋭い音です。しかし少し硬めであまり余裕が感じられません。1943年のライブ録音はその反対で、動きが柔らかく有機的で勢いがありますが、前に突っ込みすぎなところがあり、安定感には欠けます。
 この1940年の録音は、1938年と1943年のちょうど中間といったところで、硬さや鋭さと動きの柔軟性のバランスの良い演奏です。
 さらに音の重量感と音楽の安定感もこの演奏が一番かもしれません。音はたっぷりと響かせる一方で、テンポはやたらに動かしたりせず一定を保ち、ここぞというところだけはっきりと大きく動かしています。
 また、そういうここぞという部分での盛り上げ方も劇的です。
 テンポは一定、もしくは少しずつ速めるぐらいでそれほど極端な変化は無いものの、ピアノからフォルテへのクレッシェンドと音のアタックやキレで次第に盛り上げていき、頂点に至る直前でついにテンポを動かして大きな山場を作り上げます。
 特に、こういう盛り上げる際のメロディーの扱いはメンゲルベルクの大きな魅力です。
 盛り上げる前の落ち着いた部分では、キレよりも重さが前面に出ていて、スピードの遅い音で粘るようにじっくりと力を入れて歌い込んでいます。それが盛り上がっていくにつれ、音のスピードが上がり、重さよりもキレが増していきます。頂点に達するところでは勢いも加わり、アタックの強さやスピード感も相まって非常に大きく広がり強い高揚感を生み出しています。
 余裕があるので切迫した緊張感はそれほど感じませんが、南国の太陽のようにギラギラと明るく輝かしい音楽です。
 第8番という曲は、演奏時間は全9曲の中で通常は最も短く(編成上の規模は第4番の方が小さいのですが)、大曲の第9番と第7番の間に挟まれて小さくまとまった曲というイメージがありましたが、この演奏は全くそのイメージに当てはまりません。
 演奏時間こそ相応の短いものですが、演奏するスタンスとしては、第3番や第5番あたりとほとんど変わりません。優美とか優雅さは飾り程度であくまでも基本は力強さのようです。

 それにしても、この演奏で一番驚いたのは第3楽章かもしれません。
 トリオの部分でホルンが落ちるわ外すわとエライことになっています。
 トリオなんてほとんどホルン+クラリネット・チェロぐらいしか演奏していないのですから、これはごまかしようがありません。
 メンゲルベルクとコンセルトヘボウ管の演奏で、ここまで大きく崩れているのもちょっと珍しいですね。1938年と1943年のどちらの演奏もほぼ問題なく演奏しているのに、ここまでボロボロというのは、やはり最初に失敗して焦ってしまい、それが先の方にまで連鎖反応を及ぼしてこれだけの惨事を招いてしまったということでしょうか。(2006/4/29)


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