指揮 | ウィリアム・スタインバーグ |
演奏 | ピッツバーグ交響楽団 |
録音 | 1954年4月15・16日 |
カップリング | ベートーヴェン 交響曲第3番<Eroica> |
販売 | EMI |
CD番号 | CDM 7243 5 67098 2 9 |
わたし好みの、快速にすっ飛ばして行く演奏です。 もう、冒頭からスピード感に溢れています。 それは、まるで、ダムに水を一杯に貯め込んでおいて、急に水門を全開にしたかのようで、巨大なエネルギーの塊が、一気に飛び出してきます。 しかも、勢いよく突き進んでいくのにもかかわらず、スタッカートの音は短くスパッと切っていて、しかも合奏がきちんと揃っているため、メリハリがくっきりとついています。 そのため、単に勢いのみに頼った演奏にならず、むしろ、巨大なエネルギーが、強いコントロールの下で、自由自在に姿を変えているような統率力の強さを感じさせます。 さらに、それに輪を掛けてインパクトがあるのがスフォルツァンドです。 この曲には、楽章を問わず、スフォルツァンドが何小節にも渡って一定の間隔で繰り返されるという動きが多いのですが、このスフォルツァンドに強烈なパンチ力があるのです。 それが繰り返される様は、ほとんど、体重の乗った重いパンチを何発も喰らっているみたいで、これでもかこれでもかとばかりに連打された挙句、最後に、これで止めだ! とばかりに、ズシンと来るものですから、本当に、ノックアウトされそうな気になってきます。 特に豪快なのが第4楽章で、ただでさえフルスピードで真っ直ぐ突き進んでいるのに、後半の短調に転調する直前の、全部の楽器が同じ音をフォルティッシモで長く伸ばすのが連続するところでは、急にテンポに急ブレーキをかけ、思いっきり溜めを作り、一音一音にヘビー級のパンチの如く、ぐんと腹に響かせておいて、短調に飛び込んだ瞬間、テンポを落す前よりもさらに一ランクほどテンポを上げ、一気に狂気じみた興奮状態に巻き込んで行きます。 ただ、ここで惜しいのは、長調から短調から変わる時には、これだけ急激な変化があったのに、逆に短調から長調に戻る時は、明確な境目が無く、何となく長調に戻ってしまっている点です。 短調から長調に戻る時には、せっかく金管楽器とティンパニーが入ってくる事で明確に雰囲気が変わるのですから、個人的には、もっと金管とティンパニーにアタックを付けて、ハッキリとした差を付けた方が良かったのではないかと思います。 他の楽章では、第2楽章において、メトロノームを模した一定のリズムで刻んでいる伴奏のテンポの良さとともに、低音楽器のメロディーが細かい動きでしかも重さがある音なのにクリアなのが光っています。(2003/5/3) |