L.v.ベートーヴェン 交響曲第8番 ヘ長調 〜第2楽章〜

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1927年6月10日
販売及び
CD番号
Pearl(GEMM CDS 9018)
東芝EMI(TOCE-8191〜99)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクのベートーヴェン第8番の中で、最も古い録音です。
 ……もっとも、第2楽章だけの録音ですが。
 念のために書いておきますが、この演奏が第2楽章しかないのは、他の楽章の録音に失敗したからでも、ましてやカンテルリのベートーヴェン第5番みたいに指揮者が死んでしまったために録音が中断されたわけでもありません。(←当たり前です)
 当時は録音技術がまだ発達していなかったこともあり、交響曲全曲ではなくアラカルト的に一つの楽章のみ録音することも多かったのです。
 この交響曲第8番の第2楽章も、人気があってしかも長さも適当だったのでしょう。メンゲルベルクもニューヨーク時代にベートーヴェンの交響曲第5番の第1楽章のみを録音したり、この第8番と同じコロンビア(レコード会社)には、ブラームスの交響曲第1番の第3楽章を録音していたりします。(オーケストラは同じくコンセルトヘボウ管)

 さて、演奏の方ですが、一言で言うと『メリハリのはっきりついた演奏』です。
 硬い部分と柔らかな部分、フォルテとピアノ、アクセントとそうでない部分、どの要素も差をハッキリとつけています。
 4分弱という短い曲ですが、曲を通してあまり変化が無いのはテンポぐらいではないでしょうか。
 といっても、もともとこの曲自体がメトロノームを模した物なのであまりテンポを動かすような曲ではありませんが。
 ただ、変化は無いといっても、本当にメトロノームのように一定というわけではなく、柔らかな部分では少しテンポが落ち、最後は少しづつ煽っていくので、若干伸び縮みはあるのですが、それほど激しいものではありません。
 一方、硬さや柔らかさといった表現には大きな差があります。
 スタッカートの音は、徹底的に短くザッザッザッと直線的に音楽が進んでいきます。それはあたかも軍隊が行進しているかのようで、指の先までピシッと力が入り、フニャフニャしたところがなく緊張感がみなぎっています。
 それが、スラーやレガートの部分になると、急に全身から力が抜けたみたいに柔らかく曲線的になるのです。もう、スタッカートの部分とは正反対で、軟体動物みたいに骨がなくなり、それにポルタメントまで加わるため、とてもリラックスした雰囲気になります。
 この二つの雰囲気が交互に現れるため、大きな差が生まれ、貧弱な録音にかかわらず表現の幅が非常に広いように感じられるのです。
 これにフォルテとピアノ、アクセントなどの要素を加えることで、さらに表現の幅が広がるのです。
 いや実際のところ、当時の録音では、微妙なニュアンスまではなかなか伝わってきません。
 ダイナミクスにしても、そう何段階もつけられるわけではなく、ほとんど、スイッチみたいにONとOFFだけみたいなものと言っても良いかもしれません。
 しかし、メンゲルベルクはこのONとOFFの差をハッキリとつけることで、可能な範囲では最大限に表現の幅を広げることができたのです。
 ただ、さすがにバランスは悪く、管楽器が埋もれ気味で弦楽器ばっかり聞こえて来ます。
 なかでも、ホルンはかなり引っ込んでいて、いるのかいないのかわからない場合さえしばしばあります。
 また、弦楽器でも、2ndヴァイオリンだけが何故か引っ込み気味です。
 そのため、チェロ(コントラバス)→ビオラ→2ndヴァイオリン→1stヴァイオリンとメロディーを繋いで行く仕掛けの部分では、途中でメロディーが消えてしまい、また途中から復活してきたように聞こえるため、まるでメロディーの受け渡しが上手くいっていないかのように聴こえます。
 まあ、さすがにここまで責めるのは、少し酷というものでしょう。
 それ以外は十分鑑賞に耐えうるのですから。(2002/2/15)


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