L.v.ベートーヴェン 交響曲第7番 イ長調

指揮カルロ・マリア・ジュリーニ
演奏シカゴ交響楽団
録音1971年3月29日
カップリングマーラー 交響曲第1番<巨人> 他
「Carlo Maria Giulini The Chicago Recordings」の一部
発売EMI
CD番号5 85974 2


このCDを聴いた感想です。


 リズムの権化として知られる曲ですが、この演奏はリズムよりも歌が印象に残りました。
 特にそれを強く感じたのが第1楽章のアレグロ(呈示部)に入ったところです。
 ここは、リズムの権化を象徴するかのように、フルートが音の高さを変えずにリズムだけで動きを付けて、それがだんだん上下に動くメロディーに変わっていくところですが、このメロディーの歌わせ方が、それはもう歌心に溢れています。
 歌うといっても、ビブラートを強くかけたり強弱の差を極端にして大げさに表情を付けるのではなく、いかにも自然なカンタービレといった感じに、柔らかく穏やかに歌っています。
 明るくのびのびとしていて、交響曲第6番<田園>の第1楽章の副題「いなかに着いた時のゆかいな感情の目覚め」を思い起こさせるような雰囲気があります。
 フルートのリズムは、音がかなり長めで、「タッタタ」ではなく「タータタ」という吹き方です。おそらく8分音符で数えて2拍目の頭に休符が入るか入らないかの差を明確に付けているのでしょう。また、ここ以外でもメロディーは一つ一つの音がけっこう長めで、縦のリズムがあまり強調されないため、鋭さには多少欠けているように聞こえます。しかし、その分、一つの音に込められた力は大きく、さらに横の流れも滑らかで、これもメロディーに歌が感じられる大きな要因の一つです。
 メロディーはキレを重視した歌い方ではなく、さらに音も長く引張り気味とくれば、全体的に重くなりそうなものですが、実際にはそうでもありません。
 まず、テンポをあまりゴチャゴチャといじっていませんし、なにより伴奏がしっかりとしています。
 メロディーは音が長めなのに較べて、伴奏は適度な長さに留めていて前に進もうとする力がより強く働いています。
 さらに、シカゴ響の合奏能力の高さがいかんなく発揮され、音の粒が細かいところまできっちり揃っているため、リズムが際立ち、全体もピシッと引き締まっています。
 この伴奏があるおかげで、メロディーは柔らかく穏やかに流れていくのに、弛緩せず、むしろスッキリとしたキレがあり、緊張感も高いぐらいです。
 他の楽章では、リズムの影響力が最も強い第4楽章は、さすがに多少重く、スピード感やキレという点では他の指揮者の演奏に一歩譲っています。しかし、やはりリズムが重要な第3楽章は、伴奏の重さとキレが上手くかみ合い、力のある演奏になっています。さらに、メロディーの軽さも柔らかさと穏やかさに意外と合い、強い伴奏の上にフワッときれいにかぶさっています。
 もともと横の流れが最も強く影響する第2楽章は、第1楽章と並んで歌が存分に発揮されています。
 ただし、ここでも必要以上に表情を付けたりはしません。
 いかにも感情を込めて弾きがちなメロディーで、たしかに力を入れて弾いていますが、それをあからさまに表に出さず、内側に込めています。
 表面上は柔らかく穏やかながら、サラッと流して弾いているのではなく、抑えに抑えて一部だけを表に見せているのです。
 あからさまに出してしまうとくどくなりますし、おそらく曲の雰囲気にも合わなくなります。一部を見せるだけでも、メロディーの微妙な抑揚により、十分に背後にある力を感じることができます。
 わたしが聴いたこの曲の演奏の中で、この演奏ほど、メロディーの魅力が前面に出ている演奏はありませんでした。なんだかこの曲の新しい聴き方を教えられたような気持ちになりました。(2005/11/4)


サイトのTopへ戻る