L.v.ベートーヴェン 交響曲第6番 ヘ長調 <田園>

指揮ジョージ・セル
演奏クリーブランド管弦楽団
録音1962年1月20〜21日
カップリングベートーヴェン 交響曲第5番 他
「ベートーヴェン交響曲全集」より
発売SONY
CD番号SX10K 92480


このCDを聴いた感想です。


 夏用スーツを隙なく着こなしているかのような演奏です。
 細部まで神経が行き届き、常に折り目正しく、だらしなさなどかけらもありません。しかし、暑苦しかったり堅苦しくもなく、非常に涼やかなのです。
 フレーズの取り方はハッキリとしていて、スラーやレガートなどのなめらかな部分と切る部分を明確に分けています。こういう歌い方をすると、必要以上に差が強調されて、ポキポキとぎこちない動きになったり、無理やりフレーズを押し込んだような窮屈な感じになりがちなのですが、セルの演奏だとごくごく自然に聞こえます。おそらくスラーでない音の頭のアタックが強すぎないように、うまく調整してつないでいるのだと思います。
 メロディーも歌い込みをだいぶ抑えています。例えば、他の多くの指揮者は、冒頭からフェルマータまでの一連のメロディーについて、フェルマータ以降とは差をつけて歌い込んでいます。その方法は、テンポに変化をつけるか、強弱に変化をつけるのかの違いはあっても、なんらかの形で濃いめに表情付しています。ライナーは、セルと並んであまり動かさない方だと思いますが、そのライナーですら、冒頭は、途中でクレッシェンドしたりとテンポを揺らして表情を濃くつけています。
 セルはこの部分をかなりあっさり演奏することで、非常にキチンとした清潔な印象を受けます。豊かな表情ではないものの、フレーズの流れは自然で、キビキビとした気持の良さを感じます。
 第2楽章は、ゆっくりとした楽章だけに、折り目正しさがさらに強く表れています。伴奏の8分音符のスラーの動きや、メロディーの最後の16分音符4つのフレーズなど、音を完全に切っているわけでもないのに、これほどハッキリと分かれて聞こえる演奏はなかなか無いのではないでしょうか。それぞれたしかにスラーやレガートをして音は次の音とつながっているのに、異常にくっきりしています。常に締まった動きでトントンと進んでいくため、テンポ自体は速くもなく遅くもなく中庸なのですが、聴いているとずいぶん速めに聴こえます。あまり、「ゆったり」とか「リラックス」といった感じではないものの、躍動感があり、私はむしろこういう演奏の方が好みに合いました。(2011/8/27)


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