L.v.ベートーヴェン 交響曲第6番 ヘ長調 <田園>

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年4月21日
発売及び
CD番号
日本フォノグラム(PHILIPS)(PHCP-3084〜97)
Music&Arts(CD-1005)
ARCHIPEL(ARPCD 0192)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクの「田園」の録音には、この1940年のライブの他に1937年のスタジオ録音1938年のライブ録音の3種類がありますが、録音時期が最初と最後でも3年しか違わないという短い時期に集中していることもあってか、音楽の作り方などの根本ではほぼ似通っています。
 第1楽章では、副題にあるような「いなかに着いた時の愉快な感情の目覚め」といったのんびりとした雰囲気は、せいぜい最初のフェルマータまでです。いや、そこまでですら、フェルマータに向かってスピードを落としていくのも、リラックスして遅くなるというより、逆に遅くなればなるほど、むしろ緊張感が高まっていきます。
 フェルマータ以降は、もう力と規律、それにリラックスとは正反対の興奮と緊張の世界です。
 フェルマータからアレグロに戻るときには、助走のように少し緩いテンポで入りますが、すぐにギアをどんどん引き上げていきます。ひたすらねじ込むように前に前に進んでいき、音と音の切れ目をハッキリとつけ、ピストン運動するエンジンのように直線的かつ鋭角に折り返しながら進んでいきます。
 こういう音楽の作り方は3種類の録音全てに共通していますが、実はこの傾向が最も強く動きが大きいのが1938年のライブ録音で、この1940年の演奏は3種類の中では一番スムーズで、縦の動きが小さめで、代わりに横の流れが強くなっています。
 第2楽章では、以前、1937年の録音の感想を書いた時に、楽譜を使って解説した、12/8のリズムなのに、メロディーだけ8分休符+16分音符4つのパターンではなく、頭の8分休符が無くなり16分音符4つの4連符になっているという、メンゲルベルク特有のパターンは、もちろん健在です。
 音楽の歌わせ方も、「小川のほとり」どころか「ポロロッカ来襲!」と言った方が近く、強弱の幅を広く取ってうねるように大きく歌わせています。
 聞いていて安らぐような演奏ではなく、むしろ興奮してくる演奏ですが、ドラマチックな盛り上がりを好む人にはきっと面白いと思います。
 ただ、他の2種類に比べると、伴奏のリズム系がわりと強調されていて、よりテンポに乗って進んでいるような感じを受けます。
 第3楽章もリズム系が鋭く強調されています。
 大編成らしく、鋭いだけでなく重さもあります。厚い響きで一体となって迫ってくるあたり、「楽しい集い」どころか、集団で詰め寄ってくるみたいで、かなりの迫力です。
 その迫力のまま「嵐」の第4楽章に入っていくわけですが、途中で一瞬テンポを止めて力をひと際高めたりと、迫力にさらに緊張感が加わります。
 この楽章はティンパニーが非常に重要な役割を担っていますが、3種類の演奏の中では、わたしはこの1940年の演奏のティンパニーが、最も硬く力強くて良いと感じました。他の演奏は少し古いだけにティンパニーがしっかり叩いていたとしてもちょっとこもりがちに聞こえますが、この演奏だけは鮮明にはっきりとしたアクセントで聞こえます。インパクトが強く、全体の響きを一点に集めて引き締めています。
 第5楽章は、嵐の後で、喜びと感謝の表情のはずですが、そんな穏やかなものではなく、嵐が過ぎ去ったと思ったら、今度はギラギラと太陽が照り付けてくる、といった雰囲気です。
 夏の日の太陽光線みたいに、容赦なくこちらに向かって突き進んできます。
 テンポ自体はほとんど変えていませんが、表情の濃さは相変わらず筋金入りで、ひたすら押しまくっています。
 盛り上がる演奏が好きにな人にとっては大興奮ものですが、嵐の後にこれでは普通の人ではちょっと濃すぎるかもしれません。
 1940年の演奏も、表情の濃さでは他の2種類に引けをとりませが、管楽器がちょこちょこ音を外していて、それも最後のホルンのソロのような目立つ部分でそれが出ているのが難点です。
 いくらコンセルトヘボウ管とはいえ、一発もののライブではある程度しかたないところでしょうが、気になる人にとってはどうしても気になるところだけに、惜しいことです。(2006/7/15)


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