L.v.ベートーヴェン 交響曲第6番 ヘ長調 <田園>

指揮ブルーノ・ワルター
演奏コロンビア交響楽団
録音1958年1月13・15・17日
カップリングベートーヴェン 交響曲第4番
発売CBSソニー(CBS)
CD番号22DC 5581


このCDを聴いた感想です。


 ワルターの「田園」といえば、戦前にウィーン・フィルを指揮した演奏もよく知られていますが、このコロンビア響との戦後になってからの録音はそれ以上に有名で、現在でも田園の一番の名演として真っ先に数えられることも少なくありません。
 こういういわゆる「名演」と呼ばれる演奏は、いくら評判が良くても、個人的にはどうしても良さがわからないというものも意外と多いのですが、この演奏は、たしかに「良い」「良い」と言われるのもわかるような気がします。
 曲の最初から最後まで、ひたすら優しく、そして甘いのです。
 メロディーは少しも気負ったところもなく柔らかく歌われ、響きは常に明るさと希望に満ちています。
 たとえフォルテで音が大きくなっても、響きは暖かく、決して硬く叩きつけるようにアクセントをつけたり、圧倒的な迫力で居丈高に迫ってくることがありません。
 しかもただ明るく柔らかいだけでなく、そこにほんのりと甘さが加わっています。
 それは、砂糖菓子のようなベタベタした甘さではなく、森の中で深呼吸したときほのかに感じる、気分を落ち着かせる澄んだ甘さです。
 この甘さが加わることで音楽の表情がより豊かになり、単に明るく優しい素朴な演奏から、より洗練された味わい深い演奏になったのだと思います。

 細かい部分では、第一楽章の冒頭の部分が印象に残りました。
 正確には、本当の冒頭ではなく、最初にメロディーが演奏された後、いったん音楽がストップして、第5小節目からまた新たに再開される部分なのですが、音楽が低い音からだんだん立ち上がって行き、次第にクレッシェンドしながらフォルテに至る流れが、力強くかつ滑らかなのです。
 内には、ピアノからフォルテに至るまでの間に溜め込まれたエネルギーが、加速度的に高まっていくのがハッキリと見えるのに、メロディーはあくまでも滑らかで力みが全くありません。
 表面の流麗さと内のエネルギーとが相まって、泉から水が湧き出るように音楽が溢れていくのを感じました。
 わたしは、今までワルターの演奏をそれほど積極的に聴いてはいなかったため、ワルターの特徴が今一つつかめずにいたのですが、この演奏を聴いてから、おぼろげながらもワルターの魅力の一端が見えてきたような気がします。(2003/10/25)


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