L.v.ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調

指揮アレクサンドル・ガウク
演奏全同盟ラジオ・テレビジョン大交響楽団
(モスクワ・チャイコフスキー交響楽団)
録音1957年1月23日
カップリングベートーヴェン 交響曲第5番(ムラヴィンスキー指揮)
発売Yedang
CD番号YCC-0158


このCDを聴いた感想です。


 ガウクというと、レニングラード・フィルでムラヴィンスキーより以前に首席指揮者を努めたこともある指揮者ですが、なにしろムラヴィンスキーが50年間も君臨していただけに、ほとんど遠い歴史の彼方の時代の出来事です。一応1930年代前半ですから録音が残っていてもおかしくはないのですが、存在するという話は聞いたことがありません。それでも、レニングラード・フィルが初来日した時には、ムラヴィンスキーが一緒に来なかったため、代役をガウクがこなしているはずで、首席指揮者を離れてからも指揮台に立つことは多かったようです。
 レニングラードを離れたガウクは、晩年、全同盟ラジオ・テレビジョン大交響楽団の音楽監督に就任しており、この演奏も、その時代の1957年のものです。ちなみに、「全同盟ラジオ・テレビジョン大交響楽団」という大仰な名前のオーケストラは、いわゆる「モスクワ放送交響楽団」のことで、現在ではたしかチャイコフスキーの名が冠せられて「モスクワ・チャイコフスキー交響楽団(Tchaikovsky Symphony Orchestra of Moscow Radio)」という名前になったかと思います。
 さて演奏の方ですが、聴く前の想像では昔のソ連らしくパワーで押しに押しまくった演奏かなと思っていたのですが、意外にも拍子抜けするほどに細かく神経の行き届いた演奏でした。
 楽器の音色は、ロシアらしく割れる寸前まで鳴らし切ったベタッとした音ですが、出だしは無造作に音をぶつけたりせず、神経を使って柔らかく入ってきます。音色のわりにソフトな印象で、嵐のような爆演を期待すると正直期待に外れに終わるでしょうが、その分、音色はロシアの力強い音のままでしっかりとまとまった、聴いていて充実感を感じる演奏になっています。
 このCDには、同じベートーヴェンの第5番をムラヴィンスキーが1972年に演奏した録音が一緒に収録されていて、ちょうど聴き較べられるようになっています。ムラヴィンスキーの演奏に較べると、年代もあって録音に差があるのはともかく、スピード感や鋭さという点ではたしかに見劣りします。しかし、ムラヴィンスキーを日本刀とすればガウクは鉈のようなもので、丁寧に扱っているので見た目より切れ味がありますし、厚みと重量感ではむしろ上回っているように感じました。
 ただ惜しいのは、ライブということもあってか、アンサンブルがかなり不揃いな点です。
 当時のモスクワ放送響は、ゴロヴァーノフの薫陶もあってそれほど技術的に劣っているわけではないはずですが、縦の線はかなりバラバラです。一部の楽器がずれているのではなく、全体がどうも五月雨式に音が出てきます。ただ、音程などは合っているため、出だしの不揃いさえ気にしなければ、聴くのにそう支障はありません。わたし自身、じきに気にならなくなり、演奏に集中して聴けるようになりました。(2007/9/29)


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