L.v.ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年4月18日
発売及び
CD番号
日本フォノグラム(PHILIPS)(PHCP-3084〜97)
Music&Arts(CD-1005)
ARCHIPEL(ARPCD 0192)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクのベートーヴェン交響曲第5番の録音というのは、第1楽章のみのニューヨーク・フィルとの機械録音も含めて4種類ありますが、この録音は、その中で唯一のライブ録音です。
 この演奏、4種類の中でもっとも燃えています。
 やっぱりライブという事もあるんでしょうか。テンポの変化などは整然としたスタジオ録音に較べて力で引っ張った部分もあり、ちょっと強引に思える点も少なくないのですが、その分、熱く高揚しています。
 第1楽章や第4楽章などは、冒頭からして既にかなりテンションが高く、このまま最後まで持つのかな、と最初のうちは不安に聴いていましたが、後半に行くに従って、息切れするどころかますます力強さは増していきます。それもフルトヴェングラーのようにテンポを速めて行って切迫した雰囲気を出すのではなく、むしろトスカニーニに近く、あまりテンポを変えずに、アタックの強さと音の輝き、なによりキレの良さでどんどん緊張感を高めています。
 いや、緊張感というより興奮というべきですね。ベートーヴェンの短調の交響曲ですが、響き自体はあまり重苦しくなく、フランスとドイツの中間にあたるオランダらしいというか、どちらかというと明るめで、真昼の太陽のように黄色くギラギラと輝きを放っています。
 もちろん明るいからといって軽いわけではありません。響きには厚みがありますし、低音も太く、どっしりとした重量感もあります。これで反応が鈍いと鈍重になってしまうのですが、さすがにアンサンブルが良いため、キレのある演奏になっているのです。
 もっとも、アンサンブルという点では、ライブなのでどうしてもスタジオ録音には劣ります。録音があまり細かい部分まで鮮明に聞こえないこともあって、どうしても複雑な部分ではゴチャゴチャになってしまうのですが、フレーズの最後などのここぞというキメの部分はピシッと揃っていますし、さらにティンパニーがかなり強めに叩いているのがうまく響きを引き締めていて、わたしとしては満足できる範囲でした。
 ただ、第1楽章の冒頭など、はっきりと粗が出ている部分もあり、そういう部分を聴くと、コンセルトヘボウ管の弦楽器は、2ndヴァイオリンが少し弱く逆にヴィオラは高いレベルにあることがわかったりと、スタジオ録音ではわかり難い差がライブでは良くわかり、なかなか興味深いところです。
 その他、ちょっと面白いのが低音の激しい動きで有名な第3楽章のトリオです。
 メンゲルベルクは、この低音の動きで、最初の四分音符から次の八分音符の連続した動きに入る時にわずかながらはっきりと間を空けて別の扱いにしています。
 ちょうど後年ライナーがやっているのと同じパターンで、メンゲルベルクはライナーほど極端ではないのですが、他の指揮者でこれをやっている人はあまりいませんし、メンゲルベルクにしてもスタジオ録音の時にはやっておらず、このライブの時だけです。オーケストラがちゃんと付いて来ているのでその場での咄嗟の思い付きではないのでしょうが、ちょっと「おやっ」と思いました。もしかしたらスタジオ録音の時も、わたしがそう聞こえなかっただけで実はやっていて、ライブではそれをもう少し大げさにやっただけかもしれません。
 さらに第2楽章でも、ライブの時だけ、メロディーに大きくポルタメントをかけたりしていますから、おそらくメンゲルベルク自身にも、ライブの方をより表情を濃い目にしようする明確な意志があったのでしょう。(2004/10/30)


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