L.v.ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調 〜第2楽章〜

指揮ジョセフ・ストランスキー
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック
録音1917年1月24日
カップリングサリヴァン 「ミカド」序曲 他
「NewYork Philharmonic a sesquicentennial celebration」の一部
販売Pearl
CD番号GEMM CDS 9922


このCDを聴いた感想です。


 この演奏の指揮者である「ジョセフ・ストランスキー」という名前を聞いても、大抵の人は「誰それ?」と思われる事でしょう。
 実は、この人、昔のニューヨーク・フィルの常任指揮者で、あのグスタフ・マーラーの後任なのです。
 ちなみに、ストランスキーの次がメンゲルベルクで、その更に次がトスカニーニなのですから、錚々たる人達が関わっていた時代という事が、おわかり頂けるかと思います。(※厳密には、メンゲルベルクはストランスキーと入れ替わりではなく、ストランスキーが在任の頃から同じ常任指揮者で、ストランスキー辞任後も留まっていました)
 マーラーやメンゲルベルク、トスカニーニと同じ立場だということは、ストランスキーもさぞかし素晴らしい指揮者だったに違いない……かというか、実はそうとは限らないようです。
 指揮者について書かれた本の中でも著名な「偉大な指揮者たち」(ショーンバーグ著、音楽之友社1980)では、『12年間の在職中、このオーケストラ(ニューヨーク・フィル)をほとんど駄目にしてしまった』とか『楽員たちはまるで彼を尊敬しなかった』等とボロクソに貶されています。
 まあ、本人も『報酬は前任者のマーラーの半分で良いが、自分はそれだけしか働けない』と言っていたらしいので(どこまで信憑性があるのかはわかりませんが(汗))、それだけ書かれるのもしょうがないかな、という気がしてきます。

 さて、そういう風に前評判はあまり芳しくない……というより、はっきりいって悪いストランスキーですが、実際、演奏はどうだったのでしょうか。
 結論から言うと、『う、うーん……』といったところでしょう(笑)
 たしかにあまり良いとは思えませんでした。
 もちろん、1917年の機械録音という、録音が録音なので、ちゃんとストランスキーの良さを聴き取れるかどうかはかなり怪しいものなのですが、とにかく雑音の間をぬって耳に届いてくる音を聴いている内に、なんとなく特徴がわかって来ました。
 まず、気がつくのは、音楽が非常にのんびりしている点です。
 これは、テンポが単純に遅いという意味ではありません。
 遅いことには遅いのですが、他の演奏と較べてもずば抜けて遅いわけではありませんし、ちょっと遅め程度で、珍しいテンポでもありません。
 それでは、のんびりしているというイメージがどこから来ているかと言いますと、それは、緊張感の乏しさです。
 といっても、この第2楽章にはもともとそういうのんびりと言うかゆったりとしたイメージがあるのですが、ストランスキーの演奏はのんびりし過ぎていささかダレてしまったようです。
 さらに、緊張感無さが横の流れに影響を与えていて、音楽が上手く繋がらず短くぶつ切りになってしまっています。
 また、もう一つ印象を悪くしているのが、ポルタメントです。
 結構、メンゲルベルクに負けず劣らず入れているのですが、つける位置はメンゲルベルクと異なっている部分も少なくありません。
 わたしがメンゲルベルクの方に馴染んでいるという理由も恐らくあるのでしょうが、ストランスキーのポルタメントは、妙に露骨な色気が感じられ、野暮ったく聞こえるのです。
 このようにいろいろ難点を感じたところを考えれば、たしかにショーンバーグがそのように評したのも納得できるところです。
 ただ、だからといって、この演奏が聴く価値が無いわけではありません。
 なんだかんだいって、こういう野暮ったくてのんびりした演奏というのも好きですし、いかにも田舎という感じで良い味が出ていました。
 指揮者の統率力という点では、かなり疑問符がつきましたが、たまにはこういう演奏も良いものです。(2002/11/8)


サイトのTopへ戻る