L.v.ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調 〜第1楽章〜

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック
録音1922年4月11・14日
販売及び
CD番号
BIDDULPH(WHL 025-26)


このCDを聴いた感想です。


 この演奏は、メンゲルベルクの録音したベートーヴェンの交響曲第5番の中で最も昔の演奏というだけではなく、メンゲルベルクの20年以上に渡るレコード録音のキャリアの最初の1ページにあたる記念すべき録音でもあります。(正確には、この第5番と「コリオラン」序曲が同じ日付)
 この録音当時、メンゲルベルクは弱冠……というには少しトウが立ち過ぎていますが、51歳になったばかりの、まだまだ少壮といっていいほどの年齢です。
 演奏の方も、後年の演奏と較べて格段に若々しく、濃厚な表情付けや柔らかさは乏しいものの、代わりに直線的なスッキリとした流れと、なにより勢いがあります。
 もちろん、まだ録音技術が未発達の時代ですので、強弱のダイナミクスの幅も狭く、バランス等も無いも同然ですが、音は意外と生々しく、ハッキリとしたアクセントが付けられているため、メリハリのついた緊張感のある音楽になっています。
 また、その一方で、第2主題の弦楽器のメロディーは、人数が少ないという利点もあるのでしょうが、後年の演奏以上にポルタメントを大胆に使い、解放的な甘さが感じられます。
 しかも、この部分では、録音の悪さが逆に上手く働いて、ポルタメントを盛大に使っている割には、甘ったるくなりすぎたり生々しくなりすぎたりせず、ワンクッションおいたかのようにサラッとした感触になり、むしろ清潔感を感じさせるすっきりとした甘さになっています。
 この甘い第2主題と硬い第1主題が対比される事で、第1主題がさらに締まって聞こえ、より一層緊張感が高く感じられます。また、その落差は、実際に録音されているダイナミクスの幅以上に、表現に幅を生み出しています。
 つまり、これによって当時の録音技術の低さを、少なからずカバーしているというわけです。
 ただ、さすがにそれだけではどうにもカバーしきれない部分というのも当然あります。
 楽器によっては、どうしても上手くマイクに入らないものもあり、メロディーラインの楽器を増やして、音を強化している部分が随所に見られます。
 原曲のスコアと見比べてみると、「おや、このメロディーをクラリネットが一緒に吹いているのか」とか「おお!、金管が入って妙にサウンドが分厚く!」といった発見があって、これはこれで妙に楽しかったりもしますが(笑)(2002/7/19)


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