L.v.ベートーヴェン 交響曲第4番 変ロ長調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年4月25日
発売及び
CD番号
日本フォノグラム(PHILIPS)(PHCP-3084〜97)
Music&Arts(CD-1005)
ARCHIPEL(ARPCD 0192)


このCDを聴いた感想です。


 緊張感が高い劇的な演奏です。
 それも常に高いままではなく、初めは低くしておいて、ここぞという場面で強引とも思えるぐらいの手段で一気に高めていきます。
 そうすると要は緊張と弛緩の差が激しい演奏と思われるかもしれませんが、実はちょっと違います。
 緊張が高いフォルテの部分はまさに力強く、圧倒するような輝かしい音です。一方、その反対の部分は、弛緩というかリラックスした柔らかい音楽ではなく、弱いピアノの音でも緊張感はフォルテと変わりないぐらい高く、内側から今にも飛び出しそうな力を、外側からの力によってギュッと押さえつけているかのようです。つまりそれがフォルテの部分で爆発するわけですね。
 これは、第1楽章の序奏が一番典型的です。
 冒頭はピアノで始まりますが、音は弱いのに凝縮された力が感じられます。途中でときどき出てくるクレッシェンドやフォルテピアノは、抑え切れなくなってちょっと力がはみ出してしまったといったところでしょうか。
 抑えてきた力がついに解放されるのは、当然アレグロの手前のフォルティッシモで音を一小節近く引っ張る部分です。
 ここは序奏のクライマックスですから、単に力を解放するだけでなく、そこに至るまでも劇的に演出しています。
 一小節前のヴァイオリンの三つの八分音符は一つ進むごとに強さが二倍四倍と球速に膨れ上がり、次のフォルティッシモの小節に入る直前で一瞬空白を入れることで緊張感をさらに高めてフォルティッシモで爆発させます。  このフォルティッシモの小節がまたテンポ以上に長く引っ張ります。ほとんど第9番の第4楽章の中盤に出てくる「vor Gott!」のモルト・テヌート並ですね。
 同じフォルティッシモの伸ばしが二小節後にも出てきますが、その間の空白の一小節は、フォルティッシモの長い伸ばしよりもさらに輪をかけて間を開けています。これがまた緊張感をさらに一段階高めています。
 そろそろ出ても良いのに思えるところで出てこないで、息を止めてさらに集中力を高めたところでドカンと来るあたり、テンポを崩してまでも劇的にしようというメンゲルベルクの意図が非常に良く表れているのではないでしょうか。
 呈示部のアレグロ以降も基本的に同じ傾向で、力で押さえつけて緊張感を高めておいてフォルテの直前でテンポを伸ばしさらに一段階高めておいてフォルテで一気に爆発させています。
 テンポの揺れはメンゲルベルクのベートーヴェンにしてもかなり大きい方ですが、基本的に硬い音で、甘さや柔らかさを出すためというよりも、劇的に盛り上げるために動かしているという印象を受けました。
 第2楽章も、アダージョでテンポが揺れる割には、甘さや柔らかさはそれほどありません。
 メロディーの歌い方も、濃厚に表情をつけて感情を入れまくって歌うのではなく、かなり直線的で芯のしっかりとした歌い方です。この楽章は、メロディーよりも、途中何度か登場する、リズム系のスタッカートの伴奏の動きを全楽器がフォルテで演奏する部分の方が力が入っています。力強さと音のキレの良さで、メロディー部分の印象が吹っ飛んでしまいました。
 キレの良さという点では、第3・4楽章も負けていません。
 第3楽章は速めのテンポで一気に突っ込んでいき、トリオ部分のここだけは遅いテンポで濃厚に歌ったメロディーといい対照になっています。
 さらに第4楽章は、キレに重量感が加わっています。小さい音のピアノ部分のキレが良いのはまだ予想の範囲内ですが、フォルテの部分で重量のある力強い音でありながら硬く締まった音でキレ良く進んでいくのはかなり強烈です。

 メンゲルベルクのベートーヴェン第4番の録音は、意外と何種類も残っているベートーヴェンの交響曲にしては珍しく1938年のスタジオ録音と、この1940年のライブ録音の二種類しかありません。これは、第9番と並んで最も少ない曲です。
 スタジオ録音に較べてこの録音は、ライブらしくより劇的な傾向が強まっています。
 テンポを保ってキレ良く進むという点では、スタジオ録音には及びませんが、テンポの変化が激しくても自然で、流れ自体はこちらの方が良いと思います。(2006/4/1)


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