指揮 | オットー・クレンペラー |
演奏 | ウィーン交響楽団 |
録音 | 1963年6月16日 |
カップリング | ベートーヴェン 「コリオラン」序曲 |
販売 | ORFEO |
CD番号 | C 233 901 A |
クレンペラーの晩年の演奏というと、テンポが遅いゆっくりとした演奏というイメージがありますが、この『英雄』もテンポという点では想像通り非常にゆっくりしています。 わたしは、本来はテンポの遅い演奏は好きではなく、聴いていてイライラしてくる場合が多いのですが、この演奏は、聴いていてもイライラすることはありません。 それどころか、逆に『えっ!? もう曲が終わっちゃったの!』という印象を受けるほど曲に引き込まれます。 それだけ、演奏に引き込まれる大きな理由の一つは、アクセントがしっかりとついていてメリハリがあるからです。 しかも、このアクセントの付け方が、古楽器によくあるタイプの硬くカンッと叩くようなアクセントではなく、ズンッと踏み込むような重いアクセントなのです。 たしかに速いテンポの場合は、硬い立ち上がりが速いアクセントの方が合っているのですが、クレンペラーのように遅いテンポの場合は、重みのあるアクセントの方が印象に残り、より相応しく感じます。 さらにもう一つ理由があります。 それは、音が締まっているということです。 確かにテンポ自体は遅いのですが、音の一つ一つはスピードが乗っていてキレがあります。 そのため、まるで弓をギリッと引き絞ったような緊張感があり、テンポの遅いことが、逆に緊張感を高め、手に汗握るようなギリギリの雰囲気があります。 この音のキレの良さは、第1・2楽章ももちろんそうなのですが、第3・4楽章のテンポの速い楽章でも十分に活かされていて、上記に書いた重みと相まって、有無を言わせぬ迫力を生み出しています。 この点は、フィルハーモニア管とのスタジオ録音よりも上ではないかと思います。 録音は、ライブということもあってか、1963年の演奏にもかかわらず、残念ながらモノラル録音です。 また、同年代のスタジオ録音に較べると、細かい部分の鮮明さは少し劣るかもしれません。 しかし、聴くのに支障を感じる程ではありませんし、昔のモノラル録音と違って、十分普通に聴くことが出来ます。(2002/3/8) |