L.v.ベートーヴェン 交響曲第3番 変ホ長調<Eroica>

指揮ハンス・プフィッツナー
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1929年
発売PREISERRECORDS(Grammophon)
CD番号90201


このCDを聴いた感想です。


 現在では作曲家として知られるプフィッツナーが指揮した演奏です。ちなみに当時は指揮者としても結構活躍していたようで、ベートーヴェンの交響曲もこの「Eroica」だけでなく、「田園」や第1番などを指揮した録音も残っているそうです。
 さて、演奏の方ですが、妙にテンポが速い印象を受けました。
 実際には、常に速いテンポで快速に飛ばしていくのではなく、途中で大きくテンポを落とす部分も多く、むしろテンポの伸び縮みが激しい方ですが、速い部分ばかり耳に残ります。
 一つには、テンポ変化が、強い部分では速く、弱い部分ではゆっくりという傾向があったため、どうしても強い部分の速いテンポが印象に残りやすかったのです。また、テンポを落とすときの変化はだいたい緩やかで、行き着いたテンポが遅くてもそれほど不自然には感じられません。まあ、これは特にわたしがテンポを粘らせることではさらに上回るメンゲルベルクなどの演奏を聴き慣れていたせいもあるかもしれませんが。
 反対に、テンポが速くなる部分は、しだいに速くするのではなく、強くなると同時にすぐに速くなり切ったテンポになるため、かなり唐突な感じがします。第2楽章のMaggiore(長調)からMinore(短調)に戻ってすぐに出てくるフーガの部分がまさにその典型で、それまでのピアノからフーガに入ってフォルテになると同時に、一気にテンポが跳ね上がります。他の演奏でもこの部分でテンポを上げる指揮者もいなくはないのですが、プフィッツナーは他の指揮者よりもさらに一段階上回っています。
 この急なテンポ変化だけでもインパクトがありますが、この速くなった部分の音楽もちょっと妙なのです。
 速いテンポなら速いテンポなりに古楽器系の演奏のようにそのテンポに乗って進んでいくならそう不自然ではないのですが、テンポが速いのにオーケストラがどうも乗り切れていません。後ろから突つかれているみたいに、前へ前へと急いでいます。
 遅い部分は遅いテンポらしくじっくりと歌いこんでいるのに、速い部分は焦って前に突っ込みすぎて、むしろ素っ気ないほどあっさりとした音楽になっています。この強引なテンポアップとそのわりに表現があっさりとなっていることのアンバランスが良くも悪くも印象に残ったのです。
 ただ、全部が全部が速いテンポと表現がすれ違っているわけではなく、例えば第3楽章はうまくテンポに乗っています。
 この楽章は、速めのテンポで飛ばしながら、音は粒がはっきりと力強く、勢いがあります。
 構造的にもがっちりとしていて、勢いがありながら全体がよくまとまり、一体となって動いていきます。あちこち不安定に聞こえる他の楽章とは異なり、これはピタッと決まっています。(2007/3/31)


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