L.v.ベートーヴェン 交響曲第2番 ニ長調

指揮フリッツ・ライナー
演奏ピッツバーグ交響楽団
録音1945年3月27日
カップリングモーツァルト 交響曲第35番 他
発売SONY(Columbia)
CD番号MHK 62344


このCDを聴いた感想です。


 ベートーヴェンの偶数番の交響曲は、奇数番が男性的なのに較べて女性的、などと言われていますが、この演奏を聴いて、そういう印象はものの見事に吹っ飛びました。
 男性的も男性的。奇数番号の曲と全く変わらない、いや、もしくはそれ以上にエネルギーの凝縮されたパワーあふれる演奏です。
『力は正義なり』という言葉をそのまま実現すると、こういう演奏になるのではないでしょうか。
 第1楽章冒頭の長い序奏部分から既にテンションが高く、ゆっくりとしたテンポなのに優雅とかのどかといった雰囲気とは全く無縁です。弱いピアノの部分でパワーを溜めておいてフォルテでは早くもパワー全開かと思えるぐらいに爆発させます。
 この時点でインパクトは十二分にありますが、序奏がこれでは、速いアレグロの部分まで持たないのではないか、あるいはアレグロになってもあまり変わらず速い部分の印象が薄くなってしまうのではないかと正直気になりました。
 しかし、そんな心配は無用でした。
 アレグロに入ってからは、今まで十分に高いと思っていたテンションがさらにもう一段階上がり、その上、速いスピードを生かして、ぐいぐいと前に突っ走っていくのです。
 アタックは金属同士をぶつけ合ったように硬く、しかも当たりは激しくても響きだけを残して音本体はすぐに引っ込むため重くならず、アタックの強さだけを取り出したような小気味良さがあります。
 さらに、パワー全開といってもそこはライナー。かって気ままに暴れまわらせるのではなく、完璧なコントロール下に置いていて、響きはむしろ締まり気味です。アンサンブルもほぼ完璧に揃っており、速く細かい動きはまるで蛇が何条もしなやかに飛び出しているかのような弾力性を持って力強く伸びていきます。もちろん強弱の変化も手の内で、一瞬でフォルテからピアノ、ピアノからフォルテに切り替わり、単に勢い任せの演奏ではなく、ちゃんとコントロールされている中でそれだけのパワーがあるのです。
 逆に響きに雑なところがない分、純粋なパワーだけが感じられ、爽快な気持ちになってきます。
 このパワーの強さは、曲の最後までずっと保たれています。
 ほとんど、よくまあ曲が終わった瞬間に倒れる団員がいなかったものだなと思えるほどで、その集中力、テンションの高さにはほとほと感心しました。
 聴いている方としても、聴いている間中、手に力が入り、燃えて時間を忘れるほどでしたから、案外、演奏している方もあっという間に4楽章分終わったのかもしれませんが。

 ちなみにこの演奏は、ライナーの代表的なパートナーであるシカゴ響ではなく、1938年から48年まで常任指揮者だったピッツバーグ響との録音です。
 ライナーはシカゴ響とベートーヴェンの交響曲を録音していますが、9曲全部ではなくいくつか抜けがあり、その一つが実は第2番です。
 ということは、少なくともスタジオ録音としては、この演奏はライナー唯一の第2番というわけです。
 本当は第2番ももう一度シカゴ響と再録音するつもりだったかどうかはわかりませんが、もし再録音していたらシカゴ響ではどう変わっていたのでしょうか。ただ、例えシカゴ響とでもこの演奏を凌ぐのはそう簡単なことではなかったと思います。(2005/1/22)


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